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連載エッセイ「弱い自分」第13回「事務所で号泣した日」

今の自分はあまり泣かない人間である。じゃあ、生まれてからそんなに泣いていないかというとそれは違う。子供の頃は嫌なことがあったり怪我をすると泣くタイプの人間だった。
同級生に酷いこと言われたり、いじめに遭うとすぐに泣いてしまう弱い人間だった。

しかし高校生になってから涙の量が無くなったのか泣くことはほとんどなくなった。
感動的なシーンを見ても、辛いことがあっても、親族が亡くなってもうるうるレベルで号泣とまではいかない体になってしまった。

そんな自分が最後に泣いたのは忘れもしない放送作家になって半年ぐらいの時だ。
この日は自宅で仕事をしていたが、LINEで先輩作家が「今から事務所に来い」と言われた。グループLINEで書かれており、続けて「新人は来なくていい」と言われた。自分は事務所に入ってまだ半年なので来なくてもいいと思っていた。
ところがしばらくしてその先輩から個人LINEで「なんで事務所に居ないんだ」と文字だけで明らかに怒っていることがわかる。
自分は正直テンパっていた。
だって新人は来なくていいと書いてあったから。おそらく事務所に入って半年以上の人はもう新人扱いされなくなると今わかった。

自分は急いで電車を使って事務所へ向かった。
事務所に着いて急いで先輩作家のところへ。
当然先輩はカンカンに怒っていた。
自分はこってり叱られ、そのまま作業場の方へ。
当然、仕事をしなければならないのだが、同時に別の番組の仕事もあり、自分の頭の中はもう完全にキャパオーバーだった。
そして自分は悔しさとストレスがいっぱいになってしまい大量の涙が出てしまい、作業したのだった。
これが最後の号泣した日であった。

この日以降、涙を流すのはあくびで出たぐらいで感情的な涙を流すことはなくなった。
完全に涙を捨てた人間になったのであった。

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