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詩「八月」

葉から葉へと
蜘蛛の糸は蔽い被さり
今朝方の雨の
滴をあつめて光っている
空は
嘘のように晴れ渡って
陽射しを避けるために
舗道から外れて
ひとりの男が
木陰をなぞって歩いている
時折
林の方へと
体は吸い寄せられようとして
立ち入り禁止の看板を目印に
ようやく戻ってくる
一日のうちに
日の射す向きは当然変わるから
境もまた曖昧に
時折
強い風は吹いて
さらに輪郭は曖昧になる
影の中に影を埋め
安堵したのも束の間
滴が零れ落ちるのが見受けられ
掬い上げたはずの光さえ
容易に見失ってしまう



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