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詩「夜を追う」

小高い山の上の鉄塔がライトアップされて
郊外からもそれは見える
川を遡るように視線を泳がせると
高層ビルの灯り
それに救われるひともいるから
と微笑みながら
決して目を合わせないひとのことを思い出した
辺りには
ヒグラシが鳴いている

誰かと比べないことと
もっと辛い人もいるからと耐えることは
両立するのだろうか
線を引くたび
昔から変わらない筆跡だと
どこに線を引くかも
どんな形が浮かび上がるかも
まるで普通だと言われて
どこかで安堵していた
それもまた特権だから
と微笑むひとは
ひたすら
窓の向こうを眺めて

それからあとはわからない
路上に赤い三角コーンが立っていて
ひび割れたアスファルト
沈下した土に
雨水が溜まっている

平らな土地に手をかざして
そこに何があるのか問われても答えなかった
書くたびに消されて
堆積した文字がある気がして
延々と続く暗がりが
ただの路上であることも忘れて



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