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映画の邦題が減ったような気がするので、集計した

古い映画を色々とDIGっていると気になる事がある。

タイトルだ。

「吾輩はカモである」
「地上より永遠に」
「素晴らしき哉、人生!」
「お熱いのがお好き」
「発情アニマル」

昔の海外映画にはどれもこれも、素敵な邦題があったようだ。

ひるがえって今の海外映画の邦題は、意味がわかるようなわからないような、原題をそのままカタカナにしたようなタイトルが並んでいる。

なんか、そんな気がしないだろうか?

僕はそんな気がした。

そこで、簡易に集計して調べてみた、というのがこの記事の趣旨だ。

はてさて。


興収上位作品のタイトルを分析

そういうわけで日本国内で公開された洋画について、大まかに邦題を調べてゆこう。とはいえ、全ての邦題を調べることは到底不可能だ。そこで、過去70年間各年の洋画国内興収トップ10作品を対象にした。

そして、やるとしたら
  Aオリジナル邦題 / Bカタカナ原題 
と2種類に大別して計上するほかない。

この区別をもとに比率と推移を割り出す。

さて断っておくが、僕は統計や分析には全く明るくない。仄暗い水の底だ。
エクセルもろくに使えない。それどころか、電卓を一定時間眺めるだけで徐々に実存的不安に襲われ、吐き気がするタイプの人間だ。

思い返すと学生時代なんて、算数の計算式を書くだけで手が震えてしまい、最終的には算数の答案用紙をびりびり破いたり、紙飛行機の形にして窓から捨てたりなどしたことはさすがにないが、算数は嫌いだった。

大体、そもそもアラビア数字の6と9が上下逆になっているということを考えるだけではらわたが煮えくり返ってくる。なぜ同じ形をしているのだろうか? 多くの人はあれを、「まぎらわしい」と感じないのだろうか。

誰もが一度間違えたことのある6と9。逆から見て9だと思ったら6だった時の落胆。ボードゲームなどではこの3マスの差が致命的である。

しかし「人生ゲーム」などと言って人生の貴重な時間をボードゲームに費やす人があるが、あれはちゃんちゃらおかしな話だ。人生の中で人生をシミュレーションするというのは一種のトートロジーであり、マトリョーシカであり、入れ子構造である。

そんなことをしている暇があるなら実人生のゲームに向き合ったほうがよいのではないか。と言いつつも、実人生だと思っているものも、本当は誰かの人生ゲームの一部なのではないか?という疑問は当然浮かぶだろう。

こうした考えは「シミュレーション仮説」と呼ばれ、ID論の一類型として近年は広く支持されている。

ともかく、そういう数字のことに思いを馳せると体の奥底から本能的な怒りがわき上がり、夜、一切眠れなくなってしまう僕は、なるべく数字のことは考えずに生きてきた人間だ。

そういうレベルの人間が人力・目測で集計したのが下記の調査結果だということをご容赦いただきたい。したがって当然のことながらなんら正式なデータではないし、正確性にも疑問が残る。

だが大きな傾向は誤ってとらえていないはず、でもある。

調査結果

それでは調査結果をお伝えしていく。調査の前提やルールをまず述べ、その後、全体の集計結果を示し、続いて年代別の推移なども見る。

【調査のルール】
◆日本国内で公開される洋画について、「かつてほど独自邦題は付かず、原題のカタカナ表記ばかりになっているのではないか」という疑問を検証するために、ヒット作にしぼって簡易集計。
◆1950年~2019年の日本国内公開洋画のうち、興行収入上位(おおむねベストテン)から算出。一般社団法人・日本映画製作者連盟の公表データ等をもとにした。
◆区分け
A「オリジナル邦題」…漢字やひらがなを使った邦題。副題が独自も含む。
B「カタカナ原題」…原題の英語をほぼそのままカタカナにした邦題
このAかBに大別する。判断に迷った物は集計しない。

【集計の結果】
分母628
うち
オリジナル邦題 275件
カタカナ原題  353件

 全体では
邦題43・7%  56・2%原題になりました。

【年代別の推移】
         邦題     原題
1950年代 80・4% 
 19・6%
1960年代 71・4% 
 28・5%
1970年代 46・5% 
 53・4%
1980年代 29・7% 
 70・3%
1990年代 21・6% 
 78・3%
2000年代 36・0% 
 64・0%
2010年代 22・7% 
 77・3%

年代ごとの推移がくっきりと

おおむね予想通りの推移だった。
以下、いかにも素人じみたグラフを参照しつつ、いくつかの点で箇条書きの分析を述べる。

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・1950年代には8割が独自邦題だったが、70年代を境にカタカナ原題の方が多くなっている。

・1990年代にはカタカナ原題が8割弱になった。50年代と比較するとほぼ完全に比率が逆転する形となり、カタカナ原題がピークを迎えた。

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(上記画像は日本映画製作者連盟のHPより引用。1996年の洋画興行収入ランキングで、この時期はカタカナ原題が圧倒的多数を占める。トム・クルーズさん主演1位の「ミッション・インポッシブル」は、1960〜70年代のドラマ時代に邦題「スパイ大作戦」と呼ばれていたシリーズのリブートだが、カタカナ原題になってしまった)

・その後、2000年代には揺り戻しがあったようにも見えるが、原題プラス日本語の副題というどっちつかずな表記が増えたことが影響している。

・2010年代には再びカタカナが8割近くになった。このあたりが天井だろうか? もしくは2020年代は9割が原題になったりするのだろうか? ひっそり注目したい。

やっぱりオリジナル邦題は減っていた

まとめると、やはりオリジナル邦題はこの数十年間で減少傾向となっていることが今回の集計でわかった。

色々と見ていて、僕は邦題文化が好きだと改めて実感もした。

ワクワクするような、あるいは非常に適切な邦題の作品を見つけると、嬉しくなる。ゾワゾワするような、どう考えても不適切な邦題を見つけると、怒りに打ち震える。

どちらにしろ感情を突き動かされるわけで、つまり邦題文化はエモいのだ。

また、集計しながら、邦題個々の質の変化についても考えたいなあと思った。これは主観的なテーマになるため、この集計記事とは別の関連記事として、近く掲載しようと思う。

追記)掲載しました →正しい邦題の付け方をレクチャーする


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