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なぜ男性より女性の方がオシャレなのか?

すっかり寒さが身にしみる季節になってきましたね。
街できらめくクリスマスオブジェを横目に、思い思いのコートに身を包む人と行き交うと、すっかり年の瀬の気分になってきます。

それにしても、女性はオシャレな人が多いのに、男性は本当に少ないな。
偏見とか贔屓目なしに、いつもそう思います。

もちろんセンスとかコーデは個人の好みとか価値観しだいですが、全体としてみたらやはり女性の方が圧倒的にレベルが高いですね。



それにはいろいろな理由や事情があると思いますが、まずレディースものの方が圧倒的にラインナップが豊富だし、デザイン的にも個性派ぞろい。

コートひとつとってみても、メンズものは定型的で遊び心が少ないですね。

オフィスでの服装をみても、例えばドレスコード自由の会社でも、女性がワンピースありカットソーありセーターありでデザイン的にも色彩的にも多種多様なスタイルなのに対して、男性はスーツを着ないにしてもシャツにパンツにジャケットといった型にはまった人がほとんどで個性はほとんど感じられません。



コロナ禍の影響で今年から男女ともにドレスコード自由にしたある会社の社長と先日お話ししたところ、「男性は服装の自由に興味がなく、自由化しても面倒がって、結局スーツとたいして変わらない」と嘆いていました。

その社長は文字どおりのオシャレ男子で、自由なドレスコードの範を示していますし、顧客との接点はほぼメールとチャットで完結する業態なので、重要な会議でもなければあえてスーツを着る意味はないはずですが、令和の時代になっても“社内改革”はなかなか難しいようです。



それではすべての男性がオシャレに興味がなくて無頓着かというと、決してそういうわけではありません。

数が少ないだけで信念をもって自分のドレスコードを確立している男性もいますし、ひとつの分野にのめり込んだらトコトンはまる傾向が強い人は、むしろ女性よりも男性に多いタイプだといえます。



男性がスーツというスタイルにこだわり、多様な価値観を服飾において表現しようとはしないのは、それぞれの人の意思や志向というよりは、“男性社会”という仕組みが機能しているゆえだと考えられます。

だから、個人的には「スーツなんて着たくない」「もっとラフな服装で仕事したい」と思ったとしても、それは“男らしさ”という暗黙の前提から遠ざかってしまうので、やみくもに自由なベクトルを持つことは憚られる。

まさにグレイソン・ペリーが『男らしさの終焉』でいった男性社会ならではの相互監視の仕組みですね。

これは子どもの頃からじわじわと刷り込まれてきている観念ですから、ゆでガエルのように無意識のうちに浸透しているといえますが、それゆえに男性自身にとってはほとんど負担とか不自由には感じられないわけです。



それでは女性はドレスコードにおいて自由奔放に個性を謳歌できるからよいのではないかというと、ものごとはそう単純でもありません。

男性=定型、女性=自由というドレスコードの定式は、たんに服飾文化のあり方という意味を超えて、ジェンダーにおける社会分業の意識と明確に結びついているからです。

これだけ男女平等や女性活躍推進が叫ばれる時代にあって、男性=仕事中心、女性=家庭中心という価値観がなかなか払拭しきれないのは、ドレスコードをめぐる男女差が文字どおり“性別識別記号”として機能している点を看過できません。



「女の人はオシャレでいいよね」
「男の人はあまりオシャレに興味ないよね」

こんな何気ない会話も、その意識の根底ではジェンダーによる役割意識の固定化が働いていると考えられます。

私は、固定的な価値観や縛りにこだわらずに、男性も自由にオシャレを楽しんだ方がよいと思っています。

それは、男性自身がオシャレを満喫できるからという点以上に、女性との関係において過剰な“男らしさ”の鎧を脱ぐことを意味するから。



「男性が自由な格好をしたら、会社の信頼がなくなってしまう」

こう懸念する向きもありますが、ほとんど杞憂だと思います。

それはオシャレでありながらバリバリ仕事をして地位を築いている女性たちの先駆的な歩みをみたら、まったく心配ないといえるでしょう。

男性より女性の方がオシャレなのはただ服装としてみたら何の問題もないけど、じつは男性が女性ほどオシャレをしないには特殊な事情がある。

そして、それは目に見えるほど女性が自由でいられるのではなく、目にみえない差別意識が強固に働いている。

このように考えると、ファッションという表現にとどまらない、なかなか根が深いテーマだといえます。



昨今では男女共通のジェンダーフリーな制服を採用したり、男女別ドレスコードを撤廃して自由化をはかる企業も増えてきていますが、心強い動きだと思います。

早く、男性も女性のようにオシャレに自己表現する時代を迎えたいものですね。


学生時代に初めて時事についてコラムを書き、現在のジェンダー、男らしさ・女らしさ、ファッションなどのテーマについて、キャリア、法律、社会、文化、歴史などの視点から、週一ペースで気軽に執筆しています。キャリコンやライターとしても活動中。よろしければサポートをお願いします。