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ブックレビュー

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読んだ本の感想を書いています。読む本を探すときなどの参考にしていただければと思います。
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#ブックレビュー

読書メモ『脳のネットワーク』 by Olaf Sporns, 1~3章

なぜ読んだ?私は神経細胞のネットワークに関するの研究をしており、ネットワーク科学の観点から脳を捉える方法に興味があるため。 新学期の開始に合わせた研究書の読書により、研究のモチベーションとメタ知識を手に入れるため。 基本情報タイトル:『脳のネットワーク』 著者:オラフ・スポーンズ (Olaf Sporns) 訳者:下野昌宣 1章「はじめに」で学んだことこの本のテーマは、「ネットワーク科学は脳についてどのような知見をもたらすだろうか?」である。 複雑系を理解するためには

最近、本を読めていますか?【『本を読めなくなった人のための読書論』 読書メモ】

なぜ読んだ?最近、あまり本が読めていない。研究や仕事に関する本・論文を必要に駆られて読むことはある。しかしその読みは苦しく、逃げ出してしまうことが多々ある。 趣味を仕事にしたら楽しくなくなるとはよく言ったもので、仕事で「読む」をするようになると、不思議と趣味での「読む」がなかなかできなくなる。 そんな葛藤を抱えながら、久々に1人で図書館をさまよう時間を取った。終わらせなければならない課題を抱えて図書館に来たものの、心が浮いたので机には座らなかった。研究で使う理系チックなコーナ

東大生が『東大生となった君へ』を読んで感じた、この本を読む意味【ブックレビュー】

Q. なぜこの本を読んだ?A. 大学3年生の頃、公共図書館にあった「大学生におすすめの本リスト」に載っていたのを見て。大学での学びとは何か、大学で身につけると良い能力とは何か、といったテーマに興味を持っていたので読んでみた。 基本情報タイトル:東大生となった君へ 真のエリートへの道 (光文社新書) 著者:田坂広志 出版社:光文社 Amazonリンク↓ 感想総論真のエリートとは何か、社会ではどのような変化が起こっているのか、それを踏まえて大学生のうちに鍛えるべき能力とは何か

催眠術で何ができるのか【『はじめての催眠術』 ブックレビュー】

基本情報タイトル:『はじめての催眠術』 著者:漆原正貴 出版社:講談社 Amazonリンク↓ 2021年3月20日に読了。 感想1,2章の「準備編」、6章の「応用編」と「はじめに」「おわりに」をしっかり読み、3,4,5章の「実践編」は斜め読みした。所要時間は1時間ほど。 本全体を通して、催眠とはどういう現象なのか、催眠では何ができて何ができないのかという内容を理解することができた。第1章では、現代の催眠に対するイメージが歴史的にどう形成されてきたのかがよくわかった。神経

逸脱した欲望への恐怖 【『コンビニ人間』読書メモ】

基本情報タイトル:『コンビニ人間』 著者:村田沙耶香 出版社:文藝春秋 私は2020年7月に読了した。 以下、ネタバレを含みます。 ----------------------------------------------------------------------------- 感想恐怖と安堵という相反した読後感を与えてくれる不思議な小説だった。主人公に100%共感する人はあまりいないと思うし、どこか恐怖を感じてしまう部分があるだろう。しかしながら、不文律から

益川敏英『僕がノーベル賞をとった本当の理由』 【読書メモ】

基本情報タイトル:『僕がノーベル賞をとった本当の理由』 著者:益川敏英 出版社:フォーラム・A 2021年7月31日読了。 感想益川先生は2021年7月23日に亡くなられた。訃報を聞いた数日後、図書館でこの本を見かけたので、読んでみた。 ノーベル賞を取るような研究も、意外とあっけないものなんだなと感じた。「CP対称性の破れ」の研究に取り組んだのは数ヶ月。お風呂でのひらめきで解決したらしい(アルキメデスのエウレカと同じですね)。以降は2度とこの研究には戻らなかったようであ