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ブックレビュー

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読んだ本の感想を書いています。読む本を探すときなどの参考にしていただければと思います。
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2022年3月の記事一覧

神は細部に宿る【『最後の秘境 東京藝大』ブックレビュー】

基本情報タイトル:最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常 著者:二宮敦人 出版社:新潮社 Amazonリンク↓ 2021年1月30日に読了。 感想2年くらい前だったか。下北沢のブックオフでこの本を見かけた。タイトルを見る、手に取る、目次を見る、本文をぱらっと見る。面白そう。具体的には、自分の生きている世界と違った世界が覗けそうなので面白そう。だがそのときは買うに至らなかった。 そして今日(2021年1月30日)、公立図書館の377(大学)コーナーを眺めていたら、本

【読書メモ】小林秀雄『読書について』

基本情報タイトル:『読書について』 著者:小林秀雄 Amazonリンク 2020年5月16日に読了。 読書メモこの本の主張を自分なりに一言でまとめると、「読書を通して、その背後にある「人間」を読む」 「美を求める心」 p86 謂わば、ただ物を見るために物を見る、そういうふうに眼を働かすという事が、どんなに少いかにすぐに気が附くでしょう。 p87言葉は眼の邪魔になるものです。例えば、諸君が野原を歩いていて一輪の美しい花の咲いているのを見たとする。見ると、それは菫の花だとわ

【ブックレビュー】ショッピングモールに対する感覚を言語化してくれる『ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市』

基本情報タイトル:『ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市』 著者:東浩紀、大山顕 出版社:幻冬舎 Amazonリンク 2021年1月25日に読了。 なぜ読んだ?ショッピングモール巡りをしていて、ショッピングモールという空間に興味を持ったからである。2020年の秋頃、東京にあるさまざまなショッピングモールの、全フロアを網羅的に見てまわることが好きだった。まるで博物館にいるかのように。 そんな時、図書館をまわっていたらこの本を発見したので、借りてき

催眠術で何ができるのか【『はじめての催眠術』 ブックレビュー】

基本情報タイトル:『はじめての催眠術』 著者:漆原正貴 出版社:講談社 Amazonリンク↓ 2021年3月20日に読了。 感想1,2章の「準備編」、6章の「応用編」と「はじめに」「おわりに」をしっかり読み、3,4,5章の「実践編」は斜め読みした。所要時間は1時間ほど。 本全体を通して、催眠とはどういう現象なのか、催眠では何ができて何ができないのかという内容を理解することができた。第1章では、現代の催眠に対するイメージが歴史的にどう形成されてきたのかがよくわかった。神経

逸脱した欲望への恐怖 【『コンビニ人間』読書メモ】

基本情報タイトル:『コンビニ人間』 著者:村田沙耶香 出版社:文藝春秋 私は2020年7月に読了した。 以下、ネタバレを含みます。 ----------------------------------------------------------------------------- 感想恐怖と安堵という相反した読後感を与えてくれる不思議な小説だった。主人公に100%共感する人はあまりいないと思うし、どこか恐怖を感じてしまう部分があるだろう。しかしながら、不文律から

益川敏英『僕がノーベル賞をとった本当の理由』 【読書メモ】

基本情報タイトル:『僕がノーベル賞をとった本当の理由』 著者:益川敏英 出版社:フォーラム・A 2021年7月31日読了。 感想益川先生は2021年7月23日に亡くなられた。訃報を聞いた数日後、図書館でこの本を見かけたので、読んでみた。 ノーベル賞を取るような研究も、意外とあっけないものなんだなと感じた。「CP対称性の破れ」の研究に取り組んだのは数ヶ月。お風呂でのひらめきで解決したらしい(アルキメデスのエウレカと同じですね)。以降は2度とこの研究には戻らなかったようであ