エッセイ|リハビリ豆富ハンバーグ。
もう何日?10月になってしまった私は、憧れの?ネトゲ廃人になった。
右側だけハネる髪の寝グセもそのまま、起き掛けにベッドの中でパズルゲームのブロックを積み重ねては消去してゆく。
「できない。苦しいよ。だって前はできていたんだよ。生活のために単身メキシコにも飛んだ。年末までに〇〇万円必要となればどうすれば達成できるかってひたすら考えて実行してきた。そういうことができていたのにどうしちゃったのか、一つもできなくなった」と夫に話した。
人生の苦労でいったら私のほうが断然、激しく絶えないが、くやしいことにさらっとこなしてしまう夫は、達観している。
「うむ」
「考えたってもうわかんないよ・・・」
わけのわからないくやしさがこみあげて勝手に涙が滲んだ。
「いまの自分を認めてあげたらいいんじゃないか」
「どういう意味?」
「今日は起きれたとか、ご飯つくれたとかさ」
「え・・・」
「亜希はさ、認めてないだろう。そういうのひとつずつ。これ、できた。これもできた。まずはそこからじゃないのかな」
「そんなんでいいの?」
「うん。いい。起きれた。洗濯できた。できてもできなくても責めない。ただできた。それだけ」
そんな会話をして、ダラリとした私を認めることにした。
悪あがきとして、書いたnoteを下書き保存して、ちっともいいとおもえない短歌を作っていたけどそれもやめた。
よく習慣を継続することが大事と訊いていたから、noteを書かないが日毎積まれると怖くてたまらなくなった。もう一度にも勘を取り戻すことにも、戻れなくなる怖さが迫る。
戻れなくなるかもしれないけれど、埒が明かない。
迷いがなかったかといえばウソになる。欲だってあるし、頭痛がおさまってきたのにとか、10年前と同じようなエネルギーはいまの私にはないから最初からってなったら真空になり潰れてしまうかもしれない。
noteやXで誰かがくれる「スキ」や「いいね!」にありがたいと思いつつ、返す気力がなく申し訳ない気持ちになりながら、停止した。
同時にネットゲームを始めた。
一生そこから脱け出せなくなるのが怖くて避けていた自堕落な自分のままで過ごす。
夫が「ジョギングに出掛けて戻ってきた時、出た時まんまの格好でリビングのラグにころがっていたりして」といった。
「あはは、そうかも!」とあえて悪びれることなく返してみた。
こんなことをしたところで、生産性はなく、時間の有効活用からは程遠いい。金銭も生み出さないばかりか、なんの意味も見いだせない。
リア充の人からみたら、そんな無駄な時間でしかないだろうし。
最大の現実逃避、暇つぶしであるにちがいない。
ブロックを積み重ねてステージをクリアしても、私が望む限り、ゲームは永遠に続く。
積み重ねる時にも性格が出て、律儀に積み重ねっようとしてしまう。失敗が許されないが沁みついてしまっている。
たかがゲーム、何度だってやり直しがきく。
それなのにつまらない重ね方しかできない。私はいままでこんなにも失敗してはいけないに縛られてきた。
いつもおかないような場所においてみる。失敗やりなおしでゲームオーバー。もう一回。もう一回。と2時間、3時間が過ぎてゆく。
アホだなと思いつつ、もう一回。無駄なことが楽しい。
そんなことをしていたら急に片づけたくなった。
服も冷蔵庫内も、洗面所。バスルーム。何年も放置されたスプレー缶もスッキリさせたい。
ずっとあたまの片隅から離れなかったスプレー缶。
わが家はこういう面倒なこと、こまごまとした雑務、面倒、骨が折れる、重労働は私がこなしていた。
みんな「やさしい旦那さんでいいよね」というし、もちろんやさしい。
けれど、重度のワーカーホリックな彼は、家のことなんてほとんどしない。
よく、日曜日の早朝にお父さんが洗車していたりするけど、うちではありえなかった。
できないこと不安なのに人に頼ることがよくわからずひとりでやってきた。
やるしかなかったからやっていただけのこと。「ほんとうはイヤなんだけど、やりたくない、できないよ。不安でたまらない」を無視してやって、私を擦り減らした。
こころを荒ませる何年も放置された中身が詰まったスプレー缶を家の中から廃棄したい。だらしない、問題の先送りが嫌いだった。
苦手ながらも、苦手だからこそ、モノを持たないようにしていた。
「服もクツもいっしょに見てほしいし、何年も放置されたスプレー缶だってもうひとりじゃ処分できない。いっしょに缶に穴をあけて廃棄してほしい」片づけたい旨を切実に訴えて、いまの現状は理解してもらえたらしい。
服を仕分けして、底が擦り切れたクツ、明らかに履かないクツを袋に入れてゆく。
指定ゴミ袋3つ分を週明けに棄てた。
棄てたらスッキリしたせいか「めんどくさい」と思ったことをすぐに手を付けようと思えた。
心が動けない時は、ほんとうにキツいけれどそういう時こそ動く。
いまのところうまくいっていて秋の気配に相まって家中に清々しさが流れる。
人生は最大の暇つぶし。兎のように駆け抜けても、カメのようにゆっくりでも、何万光年の彼方では藻屑のようなもの。
「ねぇ知ってる?人類が滅亡した後の世界はイカが世界を支配しているんだって」
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