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語ろう。マジ卍問題


〇空から扉が! めっちゃウケるんですけど~

 西暦2083年8月。世界各国主要都市上空から〝扉〟が落ちてきた。首都高層ビル三棟並べたような巨大な扉。観音開きで木造性に見える。扉表面には年輪の模様、枠には細かな彫刻が刻まれている。
 扉が開いた。
 霧が立ち込める闇の中から、二つの赤黒い光が灯った。動いている。それは生き物だった。巨大だ。爬虫類、絶滅した恐竜の一種に似ていた。空想上の生物、ドラゴンに——。

〇異世界からのファーストコンタクト! めっちゃウケるんですけど~

 ドラゴンの足元から、人影が現れた。エルフ、オーガ、ドワーフ、フェアリー……etc。ファンタジー世界の住人たちだ。彼らは協力して何かを持ち運んでいる。円卓テーブル。各種族がテーブルを囲む。そして、天に向かって叫ぶ。「マジ卍~」と。

〇意味わかんなくて、めっちゃウケるんですけど~

「この『MA・JI・MAN・JI』とはどういう意味かね」合衆国大統領、ロブソン・ハーヴィは側近に尋ねる。
「日本語のようですね。気分が非常に高ぶっている時に使う感嘆符のようなものです。半世紀以上前の言葉なようで」
「では、彼らは日本語を話すのかね」
「不明ですがその可能性はあります。このマークを見てください
「!! ハーケンクロイツ? ヤツらはナチスか?
「いえ。向きが違います。これは日本の地図記号のようです。寺院を意味するもの
「ジイン? ではこれは彼らの宗教的なシンボル? それともイコンのようなものか?」
「現時点では不明です」
 扉は、ニューヨーク、東京、モスクワ、ロンドン、北京などで確認されている。彼らは「マジ卍」と叫ぶだけで、何もしていない。それ故に各国が静観している状況だ。しかしこの混乱が長く続けば、市民の反応も含めてどうなるか……。
「わかりません。本来の使い方なのか不明ですし、そもそも日本語かどうかも……、たまたま発音が日本語に似ているとういうだけで」
「どうすればいい?」
「さらなる情報収集を。とにかく、彼らの正体が判明するまでは軽はずみな行為は厳禁です。今のところ、大した被害が出ていませんので、市民にも良識ある行動を呼びかけるのが無難です。各国のトップにも……」そんな中——。
「大統領、ヤツらが動きました。そして……」
 モスクワが消えた。

〇ドラゴン、激おこ。めっちゃウケるんですけど~

 ロシア軍がドラゴンどもに攻撃をしかけたらしい。攻撃はドラゴンの鼻息により、全て防がれ、反撃にあった。ドラゴンが吐き出す火球によりモスクワ全域が消滅。ロシア政府はサンクト・ペテルブルグに政府機能を移管。反撃を画策しているとの情報。同時期に中華連邦領・平壌にも高エネルギー反応。モスクワと同じ運命をたどったと思われる。
 こちらの映像、ニューヨークのドラゴンも火を吐いたが、こちらは被害はない。ホログラムのような映像だ。CIAの解析によると、彼らは必要に応じて実体化できるらしい。同時に複数の場所に存在しているようなものだ。異世界の科学、いや魔術、恐るべし。
「対策は?」と大統領。首を横に振る側近たち。困ったことにロシア政府は核による反撃を試みているとの情報が入った。同盟国のかの国もそれに同調する、との分析結果だ。情報がないまま、異世界の住人たちと事を構えるのはマズイ。頭を抱える大統領。そんな中、朗報は入る。日本政府、JSA(日本国家安全局)からだ。
「彼らとの接触に成功」

〇マジ卍~ めっちゃウケるんですけど~

 テーブルに向かう者がいる。柴咲加奈(82)。かつて女子高生だったころ(西暦2017年ごろ)、リアルタイムで「マジ卍」を使っていた女。もう死語となったこの言葉の真の意味、真のニュアンス。真の使い方を知る数少ない生き残り。その彼女が異世界からの来訪者の通訳を買って出たのだ。つまり、彼女だけが彼らの事が真に理解できるのだ。
 ただ一つ、問題がある。彼女は認知症を患っており、時折コミュニケーションが取りづらくなるのだ。そのため、孫の柴咲茉奈(17)がフォローに入る。茉奈だけが、認知症が進行した祖母の意志や主張を正確に汲み取ることができる。いわば通訳の通訳だ。こうしてかつてのJKと現代のJKが協力して、この重大ミッションに挑む事になった。

〇敵がやってくる? めっちゃウケるんですけど~

 マジ卍! 
 会合の結果は驚嘆すべきものであった。彼らの目的は侵略者を迎え撃つため! もうじきヤツらがやってくる。しかも宇宙から! ヤツらの力は強大で、地球上のあらゆる世界の、あらゆる種族が団結しなければ、たちまち滅びるだろう。そのための会合を開きたい。しかも戦場はここになる。今、証拠を見せる
 マジ卍! 扉の向こうに宇宙空間が見える。星々の間には巨大な宇宙船。UFO——。

〇それでも協力しないの~ めっちゃウケるんですけど~

 疑心暗鬼。圧倒的な説得力をもった映像。そして圧倒的な戦力を見せつけられても人類は動かないあんなババアとガキの言う事を鵜呑みにするのか。そもそも人類側の代表として相応しいのか。そして彼女たちを誘拐、洗脳しようとする中国国家安全保障局。異世界からの客人の〝力〟を奪おうと各方面からイニシアチブを掴む謀略が繰り広げられる。すべては面子と利益のため。そしてこの間ににも侵略者は地球に迫り、某国たちは核攻撃を客人に加えようとしている。客人たちよ、果たして人類と協力する価値はあるのか。人類存亡のカギを握るのはやはり二人のJKだ。急転直下のマジ卍な展開! 結末は劇場で確認してほしい。きっと、多分、おそらくめっちゃウケるんですけど~。

2032年 日米合作 配給 ユービックファクトリー



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