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キリング・マスゥ~イン オリガ&カレン ~オリガ・オルガ・オリガは初期設定で使え2



〇相棒

 キリング・マスゥ~イン、オリガ・オルガ・オリガは本日も依頼を受け、悪党どもの大量処分に向かっていた。今回のターゲットはジャパニーズ・ヌードル『ヤキトリ』の店主、ホリ・ハヤシとその体育会系仲間たち。ラーメンヤンキーのハヤシは、自社製品のスープパウダーと称して、コカインを精製・販売をしているのだ。一味の数は約30人。戦闘用アンドロイドの自分を相手にするには少なすぎる。楽な仕事だ。そしてこのミッションはさらに難易度が低くなると、オリガは計算している。オリガには優秀な相棒がいるのだ。
 カレン・マクドナルド。かつてベビーシッターとして働いていた時に、見つけた逸材。オリガの中のプラグラムがこう告げる。彼女をマスゥ~インとして育てよ、と。
「先に行くよ」カレンが言う。

〇成長期

「私に仕事は与えてもらえないのですか?」
「ごめん、ついつい」
 ラーメンヤンキー一味は一人残らず死亡。その亡骸はいずれも、銃やナイフで目をえぐられていた。まず間違いなく一撃で昇天だろう。偶然巻き込まれた4歳児の初陣から十数年、彼女は、その才能を開花させ、オリガをしのぐキリング・マスゥ~インに成長しつつあった。

〇母の悩み

 カレンの母、ヘレン・マクドナルドには悩みがあった。娘の将来のことであった。そうせざるを得なかったとはいえ、このまま裏稼業を続けていいものだろうか? 今からでも普通の女の子の人生を歩んでほしいのだが……。ヘレンはかぶりを振る。あの子には無理だ。ハイスクールもそれで退学になった。カレンをいじめようとした生徒を一人残らず半殺しにしたのだ。中にはレスリング部の男子生徒も交じっている。マウントを取ろうとした生徒はみんな骨を折られ、銃で撃たれ、後々まで障害が残るほどであった。よくも退学で済んだものだ。刑務所に放り込まれなかったのは理由がある。
 政府の庇護があったからだ。
カレンが問題を起こした直後、『ユニバース』となのる組織から連絡が来た。後処理は我々に任せてくれ。娘さんの才能を大いに買っているからだ。と。
 実際、その通りになった。その後『ユニバース』からの提案(というか命令)によって、ヘレンは小さな会社を設立する運びになった。表向きは介護事業所だが、その実は『ユニバース』からの命を受け、犯罪者や反社の処分などの〝きれいな汚れ仕事〟を実行する。死体処理の後処理は『ユニバース』が行うが、自分らは単なる〝便利屋〟のような気がする。オリガは言う。あれは政府の——FBIかCIAかは不明ですが——下部組織のようです。〝恩を売った〟方がよいでしょう。その助言に従っているが、状況はいつ変わるかわからない。

〇カレンの悩み

 カレンには悩みがあった。母親のことであった。
 戦闘能力が低すぎる。一般人だから仕様がないけれど、クソ野郎どもに感づかれて襲われたらどうすればいい? 私かオリガがいれば大丈夫だけど、不意を突かれたらどうする? ママはオリガとのトレーニングを断っているし……。やはり早くアレを完成させるしかない。ママ、アーマード・コア大好きだし。

〇オリガの悩み

 オリガには深刻な問題を抱えていた。自身を構成するパーツが製造中止になったのだ。中古市場でもあまり出回らない機種——軍事用——なだけに、事態は深刻だ。実際、関節などに使われているパーツにきしみが出始めている。老朽化。ソフトウエアは自身で保存やアップデートが可能だが、身体を構成する部品に関してはその限りではない。早急に対策をしなければ……

〇離婚調停と面会時間

 ヘレンの夫、コージー・マクドナルドとの離婚調停はようやく終わりが見え始めたところだ。別居して10年以上になる。反社組織に属していたことを隠し、彼自身の不手際によって裏社会を歩まざるを得なくなったことからくるすれ違い。ただ、カレンの父親だ。父親としての役割を果たしてもらうため、娘との面会時間は確保しなければならない。護衛代わりにオリガをつければ問題ないだろう。了解しました。関節をきしませながら、オリガが敬礼する。

〇チャンスは逃さずに

 コージーはオリガの異変にいち早く気付いた。チャンスだ。コージーはかねてから準備をしてきた。娘を取り戻すための。かつて自身が所属した武器商人の組織を壊滅させた最大の障害であるオリガを倒す機会は今しかない。いまではこの組織は自分のものとなった。立て直しに奔走しているうちに自然とそうなったのだ。組織の長として、愛する娘の父親としてオリガを破壊しなければならない——。コージーは自身の護衛として使っていた最新鋭の軍事用アンドロイド、カーミラ2にオリガ破壊命令を下す。ただ彼は気付いていない。カレンがいることを。彼女にとって、オリガはメンターであり、親友であり、姉妹であることを。

〇準備はしてきた

 オリガを手にかけようとした父親、そして半壊したオリガを見てカレンは激怒する。その才能とオリガと築き上げた努力を最大限に発揮してカーミラ2を撃破。慌てて逃げるコージー。追いかけようとするカレンをオリガが止める。
「どうしてパパだから?」
「違います。パパはいずれ始末した方がよいでしょう。が、慌ててはいけません。これはいい機会です。私にも、ヘレンにも。ママのために開発していたアレを完成させましょう」
 オリガの頭部ユニットとカーミラ2の頭部を交換。そして、カーミラ2の頭部制御ユニットをかねてから母親のために開発したパワードスーツ:ヘレン・ミレンの制御ユニットとして活用。さらにそのパワードスーツを使って、各ブロックを組み立てる。一回り大きいパワードスーツをヘレンのパワードスーツが操縦するのだ。巨大ロボの誕生。これで、カレンとオリガの悩みは解決することになる。

〇君たちはどう生きる? そりゃあ、全員ぶっ殺す。

「離婚調停はこれで終わりよ。ママ」
「会社を大きくするチャンスでもあります」
 オリガは言う。コージーが持っている武器商人としてのルートをこちらで奪いましょう。
 ヘレンは困惑する。こんな偶然があるものか。『ユニバース』からの次の仕事の依頼がまさにこれだったからだ。いずれにせよ、夫の組織は私たちを見逃すはずはない。だったら……。
「たとえ相手が大統領でも、全員ゴアにぶっ殺す」
「そうですね。先手を打ってこちらから参りましょう」
 嬉々と話す娘とオリガを見て、その輪に入りたいという自分がいた。
「そのパワードスーツのOSに会計ソフトをインストールして。いずれそのロボットごとオフィスにします」
 はい、喜んで。とオリガが言った。

〇帰って来た

 スマッシュヒットした前作「オリガ・オルガ・オリガは初期設定で使え」の続編。アクションシーンやグロ描写も前作より、はるかにパワーアップ。そのためか、前作以上の興行成績を得て、続編、第三作の制作が決定した。公開時期は未定だが、何でも今はやりのマルチバースものになり「ゾンビを嫁に持つ男 空飛ぶブッチャー アブドラ・ナグモ」との対決がメインとなるとの噂。何ともアレなマルチバースである。

2049年 アメリカ 配給:ユービックファクトリー


〇配給元からのお知らせ



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