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悪魔の双子! 精神攻撃 ドグラとマグラ

〇遠く離れて。

 人類が地球から遠く離れたDE-J星系の第四惑星Maに植民してから、すでに100年余りが経過していた。開拓は進んではいるが、地球の同レベルの生活水準に達するのはなかなか難しいのが現状だ。この惑星Maにも未開拓な地がまだまだ多い。ここ地球連邦行政管理地区F101、通称ネオ・トンデンもその例に漏れない。

〇行方不明事件

 四谷恵子は相棒を引き連れ、ゴールドバーク家へ向かう。夫妻の双子の娘、ハンナとカンナ一昨日から行方不明になっていると言う。事情を聴取すると、二人は森の中から現れるアレに飲み込まれた可能性が高いと話す。アレ——光の霧。光霧。他の管轄区だが、最近よく聞く事象だ。何でもこの光の霧に包まれると、神隠しにあい。二、三日経ってからひょっこり帰ってくる。その間の記憶は一切失われ、何にあったのか、何をされたのか、本人にはさっぱりわからない。この星特有の怪奇現象、光霧の正体については未だ解明されていない。

〇無事、保護。……しかし何かがおかしい。

 聴取の間、四谷の元に連絡が入った。森の外で女の子二人を保護したと。喜びにむせる夫妻。四谷は二人をつれて発見された現場へ向かう
歓喜もつかの間か。四谷は少々夫妻に同情してしまった。保護された女の子は双子のようだが、東洋人、日本人のように見えたからだ。
 それでも、泣きながら二人を抱え上げる夫妻の様子を見て、養子でもとったのだろうと思った。血のつながりがあろうがなかろうが、間違いなく、彼らは真の親子なのだ。
 だが、次の瞬間、四谷は自分の耳を疑った。
 娘の名前を呼ぶ夫妻。その名は「ドグラ」と「マグラ」。

〇そして、自身にも。

 夫妻はいつの間にか正木と名乗り始めた。人種も年齢も変わっている。強烈な違和感は恐怖感に変わる。何が起きている? 四谷は双子を見る。ドグラとマグラ。日本人形のような容姿。白目がなく深淵を思わせる瞳の黒が金色に変わる時、四谷の身に異変が起きる。
 体が重く、激しい疲労感に襲われた。ふと鏡を見る。自身が老婆に変わっている。皺だらけの両手を見ながら、悲鳴を上げる四谷。

〇幻覚なのか。それとも。

「落ち着いて」そうなだめるのは相棒のフランチェスカ。ん? あんた男のはずだろう。
「どこかの世界ではね」
 フランチェスカは言う。我々のプログラムにバグが起きている、と。
 我々はみな地球からコールドスリープを駆使してこの星に来たと思っているが、実は人間の個人メモリをプログラムに組み込んだアンドロイドである。何百光年もかかる宇宙旅行に生身の身体が耐えられるはずがないため、このような処置を取ったのだ。そして、我々共通のプログラムに何らかのトラブルが発生し、このような幻覚を見せられている。私、フランチェスカはそのバグを排除するための、いわばワクチンプログラムなのだ。そして、そのためには光霧から生まれたドグラとマグラを処分しなければならない。私に協力してくれるか?
「だけど、あんた自身がバグかも。偽物かもしれないわ」双子が声を揃えて言う。そして、フランチェスカが消えた。
「私はドグラ、そしてマグラ。両方である。我々はそれぞれ独立しているが、同時に存在している。そして私、ドグラとマグラはこのあらゆる宇宙を司るもの」

〇流れる世界。

 ドグラは次元の縦軸、マグラは時間の横軸を操る。四谷が老婆になったのはドグラの仕業。夫妻の人種が変わったのはマグラの仕業、他の次元の〝可能性〟を持ってきたのだ。この双子はマルチバースを操る事ができる。だがそれは何の目的で?
 その問いの答えを探る前に、目まぐるしく世界が変わる。窓の外には恐竜ステゴザウルスの群れがUFOに飛び掛かる様子が確認できる。突然ついたテレビでは、ニュースキャスターが、刀を振り回した野武士軍団がゾンビを駆逐する春の風物詩の原稿を読み上げる。
 早く殺すのよ。西部劇のガンマンの恰好をしたフランチェスカが、再び四谷の前に現れ、すぐに消えた。
 カオス。世界は一体どうなった?
 フランチェスカの言う通り、ドグラとマグラが原因なのか、あるいはそんなものは関係なく、自分が単なる精神異常者でどこか病院で見ている夢なのか……。いずれにしても、ただ言えることは……。
 イカれている。四谷は〝世界〟を壊すことに決めた。どんな手を使っても。

〇ポストクレジット

 映像(特に色味)や世界観が目まぐるしくコロコロ変わる本作。中でも物議をかもしたのが、ポストクレジットの存在だろう。

 私は……、そうだな……この世の全ての雑多を創造し操る者、ドクターザップガンとでも名乗ろうか。私はおそらく、いたるところに存在するだろう。過去、未来、別次元……。ドグラとマグラも私が創造した……私は神ではない。神は私の発明品のひとつに過ぎないものだ。そして私の発明品は他にもある。いずれお見せする機会もあるだろう。では……。

 中年男性と思わしき者の音声と字幕、そしてドグラとマグラが歌う『天国を憐れむ歌』が流れて幕を閉じる……、ところでお前誰よ? フーアーユー?
 最初から最後まで訳の分からなさが蔓延する作品だが、映像や音響にインパクトが強く考察サイトまで現れる始末。はたして、今作品は名だたるカルト作品の一つと数えられる日が来るのであろうか?




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