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電波が腕時計を虐待していた

 先月、確か春分の日に、新しい腕時計を買った。12年くらい愛用していた腕時計が、どうしようもないくらい遅れるようになったからだ。

 愛用していた腕時計は、いわゆる電波ソーラー腕時計だった。バッテリーはソーラーだし、時刻合わせは電波で自動、要するに「ただ使ってる」だけで、正確に働いてくださるという優れもの。

 だけど当初から、ソーラーは良いのだけど「電波」の部分に具合の悪さを感じていた私。

 その腕時計の個性として、若干すすみがちなところがあって(笑)気付くと2分ほどすすんでるなぁ、という感じだったんだけど、その「すすみ」を矯正する電波のやり方が気に入らない。

 電波様の「矯正タイム」というのが決められていて、確か深夜だったと思うのだけど、その時間帯にある方向に向けて腕時計を置いておくと、電波様の命令により、時刻が矯正されるのだ。

 私が気に入らなかったのは、その矯正方法である。「すすみがち」という個性を持っていた私の腕時計を、もし手動で時刻を合わせるなら、リューズを引っ張り出して、ちょっとだけ調整すればいい。たかだか2分のことなんだから。

 だけど、電波様の矯正では「11時間58分」分、針をぐるぐるぐるぐる回し続けさせられていたのである。バックは許さん、前進のみ! という矯正方法だったのだ。

 たまたま深夜にその矯正を見かけて、腕時計が狂ってしまったのではないか、と恐怖を覚えた。まるで三塁コーチ(野球)のような必死感。

 いや、2分戻るだけでええのに! なんで11時間58分全力疾走しとんねん! これではまるで、昭和の運動部ではないか! 古タイヤを腰にくくりつけてうさぎ跳びとか、今の時代はせんでええのよ! というかむしろ、したらアカンの!(涙)

 電波腕時計が可哀想すぎると思った。こんなすさまじい労力を使って、いつも時刻をきっちり合わせてくれていたんだね。

 そんな「矯正」が行われた翌朝は、当然腕時計もへとへとで、秒針が2秒に1回しか動かなくなったりしていた。これは、バッテリー切れですよ、のサインである。すぐに朝日が入る東向きの部屋に腕時計をお運びして、ゆったりと充電していただけるように努めた。

 今回、12年の使用でどうしようもなく遅れるようになってしまった腕時計。電波による矯正はもう、数年前から機能していなかった。私はそれでいいと思っていた。2分くらいすすんでてもエエやないの。その腕時計の個性だと思って、私がその誤差を理解していたら、何の問題もなかったのだから。

 電波時計じゃなければ、もっと長生きできたかもな。

 そんな後悔があったので、今回の腕時計は「ソーラーだけど、電波じゃない」を条件に探しまくった。毎日自分の身につける腕時計を、電波虐待したくなかった。

 で、お迎えしたのが、アイキャッチ画像の腕時計。盤面が超好み!
 前の腕時計の、ほぼ5分の1の価格であった。

 この1ヶ月で早速1分すすんでいたけど(笑)リューズ引っ張って、ちょい、だ。時刻合わせ、簡単!

 単純計算だが、この新しい腕時計が、もしも3年以上私の腕で働いてくれたならば、やっぱりこういうことなんじゃないだろうか。

 電波が腕時計を虐待していた。

 フツーに生活する分には、秒単位で時計が合ってなくてもいいよね。もっとゆったり生きればいいじゃない。

 還暦まで、あと411日。

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