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私の数字をボスは知らない

 一昨日、仕事を終えて帰るときに、ボスに声をかけられた。

 「出勤簿、ちゃんと書いてる?」

 実は今の職場には、タイムカードというものが存在しない。
 出勤管理は、出勤簿でなされている。出勤簿、と表紙に書かれた「大学ノート」が個別にあって、働いているみなさんは、個々にその「大学ノート」に出勤日と勤務時間を記録するのである。完全なる自己申告制だ。

 そのノートを、ちゃんと書いているか? とボスが問うた理由は、

 「ウチ、お給料、20日締めやからね!」

 ということだからだ。20日が祝日なので、一昨日が締め日だったのね。初めて知った(笑)。

 もともと昨年、派遣会社を通じてお世話になり、今年に入ってから、直接雇用の契約をいただいた職場である。だから、直接この会社からお給料をいただくのは、実は初めてなのである。

 派遣時代は、月末締めの、翌月25日支払いだった。10年近く同じ派遣会社にお世話になってきたので、なんとなく、お給料というものはそういうリズムでいただけるものなのだと思ってしまっていた。

 つまり、今月いただける私のお給料は、2月勤務分・・・21日から勤務開始したので、その数日分だけであるという覚悟をしていた。

 しかし、ん? 20日締め? ということは・・・2月21日から働き始めた私の場合、今月のお給料って、つまり発生しないのでは・・・?

 という疑問を思わず口にしてしまったところ、ボス、満面の笑顔で、

 「そんなわけないやん!」

 と。20日締めの、当月25日支払いなのだ、と。だからこそ一昨日、出勤簿の記載について確認があったのである。

 うひゃー! いきなり、まるまる一ヶ月分お給料いただけるんだー!

 しかも。私、基本シフトが「土日祝及び月・水がお休み」なので、支払日の25日は、出勤日ではない。まぁ、26日にいただけるなら、全然問題ないですけどねーとか思っていたら、

 「25日、お休みやもんね! だから、22日に用意しとくね!」

 えー!!!(本気の驚愕)
 いいんですかいいんですか、お給料前倒しいいんですかっ???

 しかも、この職場・・・実はお給料、現金支給なのだ。めっちゃ昭和というか原始的とでもいうか。

 だから、口座番号なんかも訊かれてないし、そもそも先々週だっけか、お昼ご飯一緒に食べてるときに、ボスが

 「そうそう、住所と電話番号と、生年月日教えてー」

 と言ってきて。

 「え、そんなんも知らずに、私を雇ってたんですか!?」

 と思わず返すと、

 「だって、・・・さんやもーん!」

 ・・・何この、信頼だけで成り立っている雇用関係。

 それがはたして良いことなのかそうでないのかは、当事者になった今、少しばかり考えてみたけど、結論は出せていない。でも、私的にはうれしかったな。

 昔から、自分の周囲のこと(主に親族関係とか)を根掘り葉掘り訊かれるのが大嫌いだった。でも、そんなんどうでもええやん、とはなかなか主張できなくて。

 ながらく派遣会社にお世話になってきたのは、あくまで雇用主は「派遣会社」ということで、派遣先の現場では、個人情報を晒されることなく過ごせる、というのが、私的には大きなメリットだったからだ。

 でも、直接雇用となったからには、ある程度の個人情報の提供については致し方ないのかなーと思っていた。
 だけど、お給料が現金支給だからなのかよくわからないけど、とにかく、今のところ私、マイナンバーも訊かれてない。

 いまどき、それこそ、この年末年始に、たった13日間働いたアルバイト先からも、マイナンバーカードのコピーを提出せよと要求されたのである。

 そんな時代にあって、今の職場は、本当に気持ちよく働ける。私的には、最高だ。

 今の職場のボスは、私のマイナンバーを知らない。それでもちゃんと、仕事は回ってゆく。ありがたいことだと、心から思っている。

 還暦まで、あと441日。

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