見出し画像

理由

7,8年ほど前のお話です。

会社勤めをしていたときに、年に数回、本社で会議がありました。
場所は新宿。
事務所は埼玉なので、都内へ行くことが楽しみだったのです。

雑貨屋さんをのぞいたり、大きな本屋さんで過ごす時間が、気分転換にちょうど良かった。

買い物をした後は食事です。
よく行っていたのが、居酒屋さん。
お酒は飲めなくても、美味しいご飯が食べられるからです。

チェーン店ではなく、個人経営のお店を選びました。
カウンター席が大好き。
常連でもなく、お酒を飲まないのに、女性一人でカウンターに座ると、マスターが珍しそうに話しかけてきました。そのおしゃべりが面白い。

注文する料理は、たいてい「本日のおすすめ」。
大きめの紙に、マジックで書いてあります。

はんぺん 3種
厚揚げの肉詰め
スパニッシュオムレツ

全て注文しました。
どれもご飯のおかずになりそうです。

はんぺんは、三角に切ったものを焼き、味付けを変えてありました。
〇生姜醤油 
ふんわりしたはんぺんに、生姜の辛さがいい刺激になっています。
お醤油はかけすぎない方が好み。

〇バター醤油
はんぺんの上にバターをのせ、お醤油をかけまわしたもの。こってり系。

〇チーズ焼き
はんぺんの上にとろけるチーズを乗せて、オーブンで焼いたもの。
塩気が食欲をそそります。

どれもシンプルでおいしかった。
これだけで、ご飯が一膳食べられそうです。
周りを見ると、はんぺんをおかずにしているのは私くらいしかいません。

やはり居酒屋ですから、飲む人が多い。嬉しそうにお箸を動かしています。それを眺めていると、こちらも笑顔になれますね。
おいしい表情は、温かい気持ちを引き出してくれます。

ホットのウーロン茶を飲みながら、のんびりと次の料理を待っていました。
その間にお豆腐と海藻のサラダをいただきます。
さっぱりとした、しそドレッシング。
口の中に残るしつこさを消すのに、ちょうどいい。

厨房で料理を作るマスターの手元を見ながら、ゆっくり流れる時間を味わいます。

家に帰る前、お酒を飲む人の気持ちが、少し分かるような気がしました。
家族が作るご飯や、コーヒーやケーキでは得られないものがあるのでしょう。

私が飲めなくても一人で居酒屋に行くのは、それを確認するためかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?