見出し画像

歯医者に連れていってくれた先生

数年前、むし歯が痛んで歯医者にかかった。そのむし歯は数回通って無事に治った。
「ほかに、気になることあります?」歯医者さんは優しく聞いてくれた。「あのう、むし歯全部治して欲しいのですが」口の中に沢山あるむし歯、痛くはないのだけど。歯医者さんは驚いた。「ないですよ、むし歯」「えっ、黒くなってますよ」「これは黒くなってるんじゃなくて、銀色の詰め物(被せ物?)です。治療したあとですよ」私は口を開ける度にむし歯があるなあと思っていたのだけど……?結局歯石をとってもらった。
歯医者からの帰り、私は唐突に思い出した。そうだ、子供の頃。小学生の頃、養護教諭に歯医者に連れて行ってもらっていた……!

あれってなんだったんだろう。
私の母と養護教諭の間にどんな会話があってそうなったんだろう?
毎週土曜日(あの頃は完全週休二日制であった)家まで保健室の先生がむかえにきてくれて、私は先生の車に乗って歯医者に連れて行ってもらっていた。母が仕事に出る前にお金を貰い自分の財布にしまって、先生の到着を待つ。確かにそんな時期があった。先生にだってこどもがいたはずだ。思い出すと申し訳ない気持ちになる。何故、何故……?母に聞くしかないのか。あんまり聞きたくないな。お子さんむし歯があります、たくさん。歯医者に連れていってください。仕事休みが平日なので無理です。では私が連れていきます。そうですか、ではお願いします。そんなことになるんだろうか?

私が子どもの頃はまだ、子どものむし歯は親の責任ではなかった。子どもの自己責任だった。だから母は(歯磨きしない子が悪いのになぜ私が歯医者に連れていかなきゃならないの?)と思っていたのかも、しれない。かも。

小学生の頃も学校は休みがちだったが、中学生になって本格的に学校を休み出したある日、その養護教諭が家に来てくれたことがある。中学から連絡があったらしかった。
先生とは玄関先で話した。
「涼絵さん、あなた今思い詰めてるでしょ。小学生の頃は週休二日はおかしい、もっと休むべきって適当に休んでたじゃない。そういう気持ちで休んだ方がいいよ」とアドバイスをくれた。私はそのとき、実際に思い詰めていた。学校に行きたいけど行けない。行きたくないけど行きたい。ぐちゃぐちゃだった。どうして上手くやれないんだろうと思っていた。先生が気楽に休みなーと明るく言ってくれたことでハッとした。そういえば元々そういう人間だったわと。(だからと言って急に明るい不登校生になったわけではない)
先生は散らかり放題の廊下を見て、家にいるなら片付けな!と言った。

色々な人の手助けで生きてきたなあと思う。本当に。むし歯がないのはあの先生のおかげだ。しかし学校にここまでしてくれと望んでいるわけではないです。むしろ過剰サービスだと思う。本当に申し訳ない気持ち。今更胃が冷たくなる。

スリーグッドシングス
・天気が良かった
・久しぶりにアイスを食べた。美味しかった。
・良い小説を読んだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?