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ぼくらが山に登る3つの理由


妻と山に行くのは3回めで、だいぶ慣れてきた。荷造りも、お手のものである。

平日の朝9時に、山奥の無人駅に降りる。
登山客は数組。登山路がいくつもあるので、めいめいに出発する。駅前のベンチでサンドイッチを食べてから、登山口まで半時間ほど舗装路を歩く。
今回は妻も、トレッキングポールとCW-Xを装備しているので、歩行がずいぶん楽になっているはずだ。(特に翌日の筋肉痛の重度がまるで違う)
山頂では、手作りスコーンと、その場でハンドドリップしたコーヒーを飲んだ。平日ということもあり、5時間ほどの山中ですれ違った登山客は数人だった。

それにしても、ぼくらはなぜ山を登るのだろう。
そこに山があるから、と雑に酔狂な台詞も吐いてみたいけれど、ぼくの場合は主に3つある。

1つめは、気分転換。
都市の中で日常を送っているので、自然の中に入ると普段は使わない感覚が刺激される。山道のアスレチック感覚を楽しめるというのもある。これは非日常のレジャーならばたいてい満たされる要素だろう。

2つめに、山頂で食べるご飯や、下山後の温泉や、打ち上げのビールが楽しみということがある。
これも非日常の醍醐味と言えるけれど、事前に「登山という負荷」をかけていることが大きい。享楽への罪悪感も多少は減る。

3つめに、自然の中を歩きながら親しい人とゆっくり話せることがある。
登山となれば数時間は山道を共にするので、何かしら話をしている。登りの急坂ではそこまでの余裕はないとしても、下りの道程ではリラックスして話も弾みやすい。

この3つを満たせそうなレジャーが他にあるだろうか。
海水浴やサーフィンやツーリングでは、3つめの「ゆっくり話せる」というのがたぶん難しい。キャンプや釣りでは、2つめの「事前の負荷」というのがやや物足りない気がする。ぼくは行ったことがないものの、強いて言えば、野外フェスなどは3つを満たすだろうか。
よく判らないけれど、ぼくにとっては登山が最も気楽で身近な趣味という位置付けに落ち着いた。

じつはぼくには3つめの「自然の中で話せる」ということがいちばん大事だと思っている。
今まで数十回登山に出かけているけれど、独りで出かけたことは一度もないし、これからも独りでは出向かないと思う。山登り自体を単独で極めたいというような欲求は薄いのだ。3つの要素を満たすレジャーとして登山が最適だったのだと思う。

今回も、温泉に浸かり、ビールと餃子を食べて、帰りの電車で寝入って帰宅した。
「準備にはあれこれ時間がかかるのに、楽しい時間はいつも一瞬ね」と妻がいう。

幸せな秋の思い出が、こうしてまた一つ。



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