灰空
雨が降る
色のない冷たい雨
ぽつぽつと傘を打つ音が響く
色とりどりの傘が灰色の世界でくるくる踊る
うつむき加減の傘の下の顔はどれも同じに見える
何も見えない
見える気がするだけで
くるくる踊る色に目が回る
雨の音と、酔いそうなほどの色の群れ
色のない冷たい世界で色とりどりの傘が行き交う
赤、緑、黄、青、紫、オレンジ
灰色の世界に溢れる眩しいほどの色の群れ
いつから空は色をなくしたんだろう
雨はすべての色を洗い流して、灰色の世界に傘の色だけが残された
冷たい外壁、投げ捨てられたテーブル、うなだれるアネモネ
雨は色だけではなく心まで奪っていったんだろうか
行き交う人々の顔は見えない
傘の下の顔は一体何を映し出しているのか
立ち尽くす私を誰もが避けて行く
私の傘は何色だろう
こうして自分で差している傘の色はわからない
道行く色とりどりに私も含まれているんだろうか、立ち止まった私は
灰色の世界で色に溺れる
私に見えている世界は正常だろうか
色のない世界に浮かび上がり踊る傘の色
冷たい雨をぽつぽつと弾き、色を流した雨が散る
灰色の世界で色とりどりの傘が踊る
誰も彼も傘の下の顔は見えない
立ち止まった私を、誰も見てなどいない
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