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Bite me.

扉を開ける音。
間接照明が照らす薄暗い部屋にあなたの匂いが混ざる。
けだるげな仕草で振り返って、あなたの知らない顔で迎え入れる。
立ち上がって側に寄ってそっと体に触れると、あなたの体が一瞬こわばる。
潤んだ瞳で見上げれば、あなたは気まずげに視線をそらす。
「ねぇ、ずっと待ってたの。あたしは、いつまで待てば良いの?あたしのこと、まだ子供だと思ってたんでしょ?」
触れていた手をゆっくりと這わせ、煽るようにあなたの体を堪能する。
その間もあなたは目をそらして、言葉を探している。
頬に触れると、ようやく目を合わせてくれる。
何を怯えているの?
揺れる瞳の中に映るあたしを見る。
小首をかしげて、唇をなぞる。
「ねぇ、キスして」
体を合わせて、腰に手を回して、あたしに触れて?
「いいの、あなたが他を選んでいたとしても。でも、今はあたしだけを見ててよ、あたしだけに触れて?あたしはあなただけを見てるわ」
一人遊びはもう飽きたの。
薄闇の中であなたを弄びたいの。
あなたを頂戴。あなたで満足させて。
本当の顔なんて見えなくてもいいから、今が永遠に続かなくてもいいから、散らかして遊びましょ。
あなたの手を引いてベッドへ誘う。
2つの影が重なってゆっくりと沈んで行く。
「キスして」
あなたを射貫くように見つめる。言葉はふたつの唇が重なって飲み込まれていく。



【君にはもうすべてお見通しで、ここで君にキスをした俺の負け。
本当は知っているんだろう。
何も知らない子供のような顔で俺を迎えて、甘えた声でねだる。
もう何もこわくない。
そういうところも好きだったから。
溶けていこう、どこまでも。
終わりはもうそこまで来ている。
あの子が欲しい。君が欲しい。
ああ、壊れてしまおう。】



吐息に溶けていく意識。
重なる体。熱い視線が絡み合う。
あたしだけ見ててね、あなただけよ。
あなたの胸に指で作った銃を突き付ける。
カウントダウンはもう始まってるの。
堕ちていきましょう、一緒に。


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