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不毛なことを、真面目にやる愚かさ

ロシアが、ウクライナのダムを攻撃し、下流の街に甚大な被害を及ぼしているというニュースを観ました。
ロシアはいったい、ウクライナに何をしたいのでしょうか?
この戦争の着地点は何なのでしょうか?
どんなに大義名分を謳っても、これだけ人を殺し、自然を破壊した理由にはならない。
これだけあらゆるものを破壊して、それでも自分たちのやっていることが正しいと証明するために、さらに自分の国以外の土地を破壊し続け、世界の頂点にロシアあり!と知らしめるまで、止められなくなっているのではないかと思います。

本当はどこかで、無意味なことに気づいているのではないでしょうか?
しかし、ここで止めたら、自分たちのやってきたことが全て不毛であったことを認めるだけでなく、世界中から非難を浴びる。
だからもっと残酷なことでも何でもやって、自分たちの正当性を力で示すしか無くなってしまったのではないでしょうか?

そのうち、自分たちだけに通じる正当な理由をこじつけて、核兵器の使用さえ辞さない危険が、大いにあります。

悪事の正当化ほど、恐ろしいものはありません。

入管で、アフリカ人の男性が数人の職員に押さえつけられ、暴行を受ける様子が流れてきました。
入管の非人道的な行為が問題となっており、死者も出て、管理体制を見直すように抗議の声が上がっているにも関わらず、国会では不法滞在の取り締まりを強化するような法案が可決され、全く理屈に合っていません。

『日本の治安』を維持するために、という理屈は、ロシアが、自分の国が一番だと見せつけるために、という理屈と同じ性質のものだと、私は思います。

昭和の古い作品ですが、『ウィンダリア』というアニメ映画があります。
当時、大人気だったアニメーター、いのまたむつみさんの美しい絵と、人気脚本家藤川桂介さんのコラボで話題になりました。

私は絵と音楽に惹かれて、お小遣いをはたいて、この映画のVHSを買いました。
(今やビデオテープにお目にかかることはほとんど無いでしょう!)
ビデオテープ発売前に、原作小説も買って読みました。
それくらい、なぜか、この作品に惹かれたんですが……
この映画の真髄は、今の世界にも通じるストーリーの重みだったのではないかと思います。

そのストーリーとは……
以下、ネタバレ。
(名前が似ていて、ややこしいので、絵文字を付け加えてみました)

イサ🌈とパロ🌋という二つの国の間に、サキ🌳という小さな村があり、そこに働き者の若い夫婦👨‍🦱👩🏻‍🦰がつつましい生活を送っていた。

ある時、その二つの国に戦争が起きる。
それは、軍事大国であるパロ🌋が、不可侵条約を破って、イサ🌈を手に入れようとしたことが始まり。
パロ🌋は、空気が汚れ、土地が荒れ、人々が退廃的な生活を送っていたため、海沿いに位置し風光明媚なイサ🌈の土地を欲しがり、一方的にパロ🌋の傘下に入るように要請した。
しかしイサ🌈はそれを拒否し、抗戦する。

二つの国の間に位置するサキ🌳の村の人々に、両方の国から、自分たちの国に協力すれば大金を出すという申し出がくる。
ほとんどの村人は戦争を恐れて逃げ出すが、若い夫婦の夫👨‍🦱は、戦争でひともうけして、夫婦で豊かな生活を送りたいと思い、報酬の多いパロ🌋の手先になる。

戦争が泥沼化し、夫👨‍🦱は、パロ🌋の王から、イサ🌈の水門を開けてイサ🌈を水没させるように命令を受け、それを実行し、イサ🌈は丸ごと海の底へと沈んでしまう。

戦争の最中に、命令を下したパロ🌋の王は病死。
残された王妃は、不毛な戦争で何も残らなかったことに不満を抱き、勝利のキッカケを作り、高額の報酬を得て遊び暮らす夫👨‍🦱の暗殺を命じる。

夫👨‍🦱はパロ🌋を逃げ出し、妻👩🏻‍🦰が待つサキ🌳の村に帰っていくが……

この映画が公開された当時、私がこのストーリーに感動したという話をしたら、ドライな友人が

「え?結局、誰も救われないじゃない。バカな人たちがバカなことをやって、結局自分たちの身を滅ぼしちゃうんでしょ?」

と言いました。

いやいや、そうなんだけど……
確かに、結論としては、みんなおバカだったかもしれないけれど……
それを言っちゃあ、身も蓋もない!

と友人にカチンと来たことを覚えています。

でも現在、ウクライナのことや、世界の紛争、国内での人種差別、虐待……
今や、友人の言う『おバカなこと』を本気でやって身を滅ぼしている人があまりにも多い。

当時も、あちこちで紛争が起きていたので、脚本家の藤川さんは、それを憂いて、こんなストーリーを書かれたのかな?と思います。

美しく、可愛らしいキャラクターたちが、無知で純粋なゆえに身を滅ぼしていく、そのギャップが余計に切ない。
人間のかわいらしさと愚かさが、短いストーリーの中にギュッと詰められています。

そういう人間の愚かさに気づかないと、戦争や虐待やイジメのような、不毛な行為は無くならないのかもしれません。

アニメ映画のストーリーとしては、身も蓋もない話です。
でもそれを本気でやっている権力者たちがいる。

どんなに技術が進歩しても、人間の社会は、心理的に進歩しないんだな、と思えてしまいます。

エンディングテーマ 美しい星


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