見出し画像

善霊と悪霊と秘密のおまじない

「実は、いまから医者を目指して勉強を始めようかと思っていて。本気で医者になりたいと考えてるんだ」って、いまボクが本気でそんな風に相談したら、周りの知人友人はどんな反応をするだろうか?

ボクが5歳児だったら「いいでちゅねー!」と目を細めて頭を撫でてもらえるかもしれないが、人生そろそろ折り返しの53歳である。まずは怪訝そうな顔で「なに言ってんの?なんで医者になりたいの?」ってやや厳しめの事情聴取をされるのが関の山。

「ブラックジャックを読んで」「離島の診療所で」「島の人から慕われたい」などなど、熱い動機や素敵なビジョンを語ったとしよう。「よし!いいと思う。頑張れ!全力で応援する!」と言ってくれる友人は果たして何人いるだろうか?おそらく数人?いや、もしかして誰もいないかもしれない。

「いいか。医者になるには、医大に入って卒業して、医師免許を取って、それから…」と、どれだけ険しい道のりであるかを懇々と聞かされ、「残りの人生いいとこ20年だろう?」と頼みもしないのに余命を大雑把に少な目に計算され、「悪いことは言わん。やめとけ!」と愛を持って説得してくれる友人がほとんどだろう。ボクが逆の立場でもきっとそうするに違いない。

それでも、ボクが助言を聞き入れずあくまでも医者を目指すと言えば、おそらくみんな呆れ返ってしまうだろう。「この分からず屋!」みたいな感じで喧嘩になるかも知れない。「オレは前々からお前のそういう頑固なところが大嫌いなんだ!」と聞きたくもないカミングアウトを聞かされ、「そう言えばあの時も」と色んなところに飛び火し「そう言うお前だって」と応戦が始まり絶交することになったりして。

キラキラと輝く将来の夢やビジョンを語ったからと言って、周りのみんなが手放しで「いいね!全力で応援するぜ!」なんて言ってくれるのはドラマやマンガだけの話。目指すべきものが、頑張っても手が届くかどうか難しいものになればなるほど、人生を棒に振っちゃいかねない無謀な挑戦になればなるほど「悪いことは言わん」という枕詞から、なぜ無理かという説得力抜群のプレゼンが始まるものだ。もちろん、それなりに愛情あってのことなんだろうけど。

19歳のプー太郎、学歴も左の前歯もなかったボクが「社長になる!」と宣言した時もそんな感じだった。殆どの友人がキョトンとしたあと、ボクのおでこに手を当てた。最後の方は慣れたもんで、自分で前髪をかきあげおでこを差し出した。延べ100名以上がおでこに手を当てたが熱はなかった。と同時に、ボク自身に確信もなかった。そうなりたいという思いだけしかなかった。呆れられて当然か。

それでも、みんなの説得力抜群のプレゼンを舌を噛みながら聞かないようにし、賛同者がいようがいまいが、無謀な目標に一心不乱に取り組み始めた。すると、最初は呆れていた連中の中から、不思議なもので応援してくれる人が少しづつ増えてくる。「〇〇という経営者の本が面白いらしい」とか「面白い社長がいるから会わしてやる」とか。「いま勤めてる芸能プロダクションの社長が引退するらしいから後釜にアンタを推薦しといた!」と姉貴から電話が掛かってきたりもした。

これぞ『言霊』の力である。今回は自慢話ではない。

画像1

言霊とは言葉に宿るとされる不思議な霊力のことで、一度自分の口から発せられた言葉は霊力を持ち一人歩きするのだそうだ。ビジネスライクに言えばHPみたいな感じで勝手に仕事をしてくれるみたいな。だから言わなきゃ損損である。原価0円誰でも出来る広報戦略。若人はもっとギャアギャアとうるさいくらいに、ああしたいこうしたいと叫ぶべきではないだろーか。もっともっと。

言葉として発することで協力者は現れる。語ることから支援者が生まれる。伝わらなきゃ協力のしようがない。無謀な夢は、すべて語ることから、伝えることから始まる。残念ながら風呂場でひとりブツブツ呟いていても言霊は発動しないのだ。多分。

そして、最も重要なポイントは、言霊の霊力は「成功イメージを伴った行動」とセットでないと効力を発揮しない点である。人に無謀な夢を語り伝えるだけで行動が伴わなけれは呆れられて終わり。言霊は言動不一致やアンバランスを嫌う。言霊から直接聞いたわけではないが経験上きっとそうだ。行動が伴って初めて言霊も本気になるのだ。「じゃあじゃあじゃあ、本気出すよ出しますよ」みたいでちょっと腰の重い感じ。行動は「妥協のない成功イメージを伴ったもの」であればあるほど言霊のパフォーマンスは向上する。

そして、コレステロールではないが、言霊にも「善霊」と「悪霊」が存在する。「どうせオレなんか…」なんて言いながらマイナスイメージに支配された言動を繰り返していると悪霊が発動し、悪い方へ悪い方へと人生を誘導する。こちらはブツブツ呟くだけでも効力を発揮するというからタチが悪い。

でも大丈夫。もしブツブツ呟いて悪霊が発動しそうになったら、最後に「なんて、ぜーんぶウソ!」と元気よく3回叫べば悪霊は消えてなくなるそうだ。ただし、いきなり大声を出して周りから白い目で見られてもそれは自己責任で。

就活や転職活動中の人と話していても、いい大学を出て、感性も良くて、人柄も良くて、才能も感じるものの、自分自身でパタパタパタっと飛び立つイメージを持ちきれてないのか、えっ?なんでそんな感じ?って驚くぐらい安易な妥協をする人が結構多い。何とももったいない。それ、お風呂場で心当たりない?騙されたと思って大きな声で叫んでみましょう。もちろん自己責任で。

そう言えば、いつか永ちゃんみたいに武道館でコンサートをやりたい!って、前々から宣言して周りから呆れられているけど、まだ実現はしていない。この大仕事を託された言霊不良品なんじゃないかな?しっかり頑張れ!

(おしまい)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?