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実はなんだか画家に縁があった話

僕の奥さんは画家である。

といっても比較的最近のことだ。出会った学生の頃は絵を描くセンスなど知らなかったし、卒業後は一緒にサラリーマンをしていた。絵を描くようになったのはサラリーマンを辞めてからで、当初もこんなに画家として生きていくつもりだとは知らなかった。

美術館に行って「この絵は良いねぇ」なんて言っている僕も、もともと絵を嗜む趣味などなく、完全に彼女の影響だ。教養もない。

そんな僕だが、以前奥さんの誘いで世界絵画大賞という公募展に行く機会があった。展示場に行き、数多く並んでいる絵を眺めていると「ん?なんだか見覚えのある名前だなぁ」と思うキャプションを見つけた。

「まさか。。いやっ、やはり!ヒロシおじさんじゃねぇか!!」

そうだ、思い出した。叔父は絵を書いている。まさかフラッと入った公募展で出会うとは。やー、まったく考えたことなかったが、ちょっとは画家に縁があったんだなぁ。

にしてもヒロシおじさん、絵怖いよ。誰この男性。マスクも怖いし、女性も見ていて不安になる。タイトルも『思ひで』とは。うーむ、いや、考えてはいけない。目の前の絵を感じよう。ああぁすごいなぁ。見れば見るほど圧を感じる強い絵だ。鬼門となる部屋に邪気払いとして置くのが良いんじゃないかと思えてくる。

あぁ、そうだ。絵をみてすぐ分からなかったのは、実家にあるヒロシおじさんの絵が家庭的な印象がある「もう少し柔らかい絵」だったからで、もともとは怖い絵の人だ。兄が小さい時「おじさんの絵が怖い」と夜中に泣き出したというくらい、昔から不安にさせる絵を描く人だった。

その後、実家に帰る機会があったときに親父に「あなたの弟さんの絵を見ましたよ」と言ったら喜んでいた。「ヒロシさんはなんというか、ザワツカせる絵を書きますよね。」と言うと、「通り過ぎるような絵より、心に引っかかるような絵のほうが、いいじゃないですか。」と笑った。親父はヒロシおじさんの話をするときはいつも笑顔だ。心からファンなのだろう。

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実は昨年も世界絵画大賞に伺ったのだが、そこでもヒロシおじさんの絵が展示されていた。どうやら常連なのかもしれない。

ううーむ。タイトルは『れいわ聖母子像』。なんだかまた、コスモを感じる壮大な絵ではないですか。

中央の刈り上げの人は、聖母とあるので女性なのだろう。どうやらおじさんはピアスと指輪に熱い思いがあるようだが、今回は顎ピアスまで増えている。うーむ、なるほど。タトゥーと腕輪が令和的なのかもしれない。この作品は奥さんと親父とも一緒に見たのだが、ずっとこの絵について立ち話をしていた。なんなんだろうなぁ、あとを引く絵だ。

くっそー、ヒロシおじさん、好きだぜ。彼の絵をもっと見たくなってきた。親父に言って実家の過去の作品を見せてもらおうかな。

ようし、その際はまず兄が泣いたという怖い絵から見てみよう。

記事:アカ ヨシロウ
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