見出し画像

GA文庫大賞《金賞》「忘えぬ魔女の物語」の紹介

画像1

画像引用:かも仮面先生Twitter

こんにちは。相沢152cmと申します。

今回は第12回GA文庫大賞《金賞》『忘れえぬ魔女の物語』を読んだ感想を書こうと思います。

【あらすじ】
 今年の高校入学式が三回あったことを、選ばれなかった今日があることをわたしだけが憶えている。そんな壊れたレコードみたいに今日を繰り返す世界で……
「相沢綾香さんっていうんだ。私、稲葉未散。よろしくね」
 そう言って彼女は次の日も友達でいてくれた。ありふれた普通の友達みたいにそばにいてくれる中、少しづつ縮まっていく距離に戸惑いつつ、静かに変化していく気持ち……。
「ねえ、今どんな気持ち?」
「ドキドキしてる」
 それに気づいてしまった頃、とある出来事が起きて――。
 恋も友情も知らなかった、そんなわたしと彼女の不器用な想いにまつわる、すこしフシギな物語。
引用元:GA文庫大賞

冒頭は

世界と絵はよく似ている。
とりわけ一発描きでないところなどそっくりだ。
引用元:「忘れえぬ魔女の物語」

という文から始まります。

多くの人は「世界は一発描きでしょ?絵と全然違うよね?」と思うのでは無いでしょうか。私もそう思いました。

しかしこの物語の主人公 相沢綾香 にとってはまさにその通りだったのです。

世界は繰り返している。
まるで絵を描くみたいに。
私たちが描き直すように、世界は繰り返している。
何枚もスケッチを描いて、描いて描いて、また新しい紙に描いて、お気に入りの一枚だけを清書するのと同じように、世界は同じ日を繰り返し、繰り返し繰り返して、誰が選ぶのか知らないけど、一日だけが『採用』されて『昨日』になる。
引用元:「忘れえぬ魔女の物語」

なんと、私たちが覚えていないだけで実は世界は繰り返していたのです!

人間が憶えていられる『昨日』は、普通採用された一日だけなんだけど。
引用元:「忘れえぬ魔女の物語」

ではなぜ綾香はそれを憶えているのでしょうか?

なぜなら綾香は、

一度見たものは決して忘れること無く、どんな古い記憶も昨日の夕飯と同じ密度で思い出せる記憶力

の持ち主だからです。

同じ日は平均すると5回くらい繰り返すため、綾香は通常の5倍の速さで成長していきます(身体以外の精神や何か技術等)。さらに上記の記憶力のおかげで一度成功させた事は二度と失敗することはありません。同じことの繰り返しは綾香が最も嫌うと同時に、最も得意とすることなのです。


ここまで見ると不自由な思いをすることなく、最高の人生を送ることができそうに思いますが、そう上手くはいきません。

上記を見て分かる通り綾香は成長速度や頭の良さ(記憶力)が異常であるため、同級生からは妬まれ、親からは不気味がられ、しまいには、その能力によって生じたことがきっかけで親と別居するまでに至っていました。


物語はそんな綾香が高校の入学式の日である「4月6日A」に教室の中で、これから始まる高校生活に不安と期待で胸を膨らませているところから始まります。

綾香は名前も知らないクラスメートたちの声に耳を澄ましていました。

すると一続きの足音が聞こえてくる。入学式前の浮ついた教室の雑多な雰囲気に近づいてくる。
引用元:「忘れえぬ魔女の物語」
開けっ放しの扉から、駆け込んできたのは1人の女子生徒だった。
引用元:「忘れえぬ魔女の物語」

その女子生徒は綾香の一つ前の机にリュックを置くと、綾香に話しかけました。

「ねえ、間に合ったかな、入学式。ひょっとしてもう終わっちゃった?」
引用元:「忘れえぬ魔女の物語」

そしてその女子生徒は自己紹介をしました。

「あ、自己紹介しなきゃだね」
「私、稲葉未散。よろしくね」
引用元:「忘れえぬ魔女の物語」

それを聞いた綾香は、

陳腐な言い方だけど、一瞬時間が止まった。魔法をかけられたのだと思った。
引用元:「忘れえぬ魔女の物語」

まさに運命の出会いであるかのような描写です。


その後4月6日は3回繰り返しました。

誰かと知り合いになっても、その日が採用されずに赤の他人に戻るのが普通だった。
引用元:「忘れえぬ魔女の物語」

しかし 未散は3回中3回とも綾香に話しかけてきました。


綾香と未散いい感じだった日は採用されなかったり、綾香と未散が喧嘩した日は採用されたり

綾香が憶えていることを未散は憶えていなくて、それが綾香は寂しくて、

それでもぐねぐねと道を曲がりながら2人は日々をともに過ごし、お互いに下の名前で呼び合うようになり、徐々に距離が近くなっていきます。


そんな甘酸っぱい幸せな日々が続く中、ある日のある出来事によって綾香は長い間とても辛い思いをし続けます。

しまいには綾香は明日を生きるために必要なだけの活力を使い切ってしまい…


-----------------------------------------------------------------------------

百合ものではありますが私の印象では、そこまでガッツリ描かれているわけではなく、微笑ましい程度に感じたため、百合好きでは無い方でも問題なく楽しめる作品だと思います。


現在64ページもの試し読みをすることができるため、ぜひ下記のリンクから読んでみて下さい!

「忘れえぬ魔女の物語」特設サイト
「忘れえぬ魔女の物語」試し読み
「忘れえぬ魔女の物語」Amazon

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?