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やまとかたり 〜初めての本づくり その2〜

2022年の春から始まった、初めての本作り。
タイトルである『やまとかたり あめつちのはじめ』の、「やまとかたり」ついて個人的な体験も含めて書きたいと思います。

著者の大小田さくら子さんは、お子さんが小さな時からたくさんの絵本を読んであげていたことから、小学校や福祉施設などで読み聞かせの活動をされていました。そこで日本神話も取り上げて読んでいるうちに、古事記原文の読みくだし文を声に出して詠んでみようと、「やまとかたり」と名前を付けて朗誦を始めるようになったそうです。
雨の日も風の日も、毎朝自転車を走らせて、鎌倉の浜辺で大きな声で朗誦を続けられていた大小田さん。

東日本大震災数ヶ月後のある時、当時葉山に住んでいた友人が、その「やまとかたり」を鎌倉で聞き、とにかく教えてください!と自宅に招いてくれました。

そこで、私は初めて「やまとかたり」に出逢いました。

大小田さんの朗誦を聞いた時、胸を掴まれるような、えも言われぬ気持ちになったのを鮮明に覚えています。
震災後のささくれ立った心のヒダにビリビリと振動が響き、終わったあとには、乾いた体液がじんわり内側から湧いてくるような、そして、力強く晴れやかな気持ちで広野に立っているような、スカッとした気分になり、悲しいでも苦しいでもなく、ただ、涙が流れました。


「やまとかたり」の詳しいことは、著書『やまとかたり 古事記をうたう』(新潮社 2021)に書かれています。


古事記は、天智天皇が、高い識字能力と記憶力をもつ若い舎人(とねり)、稗田阿礼(ひえだのあれ)に誦習(しょうしゅう・繰り返し読んで学び覚えること)させ、何代も御代が代わったのちに、太安万侶(おおのやすまろ)がそれを聞いて筆録し、編集したと言われています。

何十年もの間、この長い「古事記」という書物を覚えられていた、非常に能力の高い舎人であった稗田阿礼を祀った神社、賣太神社(めたじんじゃ)は、奈良の大和郡山市稗田(ひえだ)町にあります。

大和郡山では、稗田阿礼に因んで、毎年記憶力大会が開催されていました。その大会のアレイチャンネルで、大小田さくら子さんの朗誦を聞くことができます。


また、やまとかたりの会では、声の出し方も練習します。
「あおうえい音の葉発声法」といいます。


「やまとかたり」を大きな声で朗誦していると、小学校の時、国語の宿題として課せられる音読だけは好きだったことを思い出します。
本より外遊びが好きな子供時代だったけれど、アニメのテーマソングをなりふり構わず大声で歌ったり踊ったり、誕生日会やお遊戯会でお芝居するのが好きだったり、父がそれをカセットテープに録音してくれて楽しそうに聴いている記憶、声に出すことは楽しい!という記憶が蘇ってきます。
大人になって忘れていた感覚、原点に還ったような気持ちになります。

また、気をこめて大きく声を発すると、日常のおしゃべりでは気がつかない、ひとりひとり独自の声の響き、魂のカラーのようなものが垣間見えるような気がします。
みんな顔が違うように、声も違って、息の仕方も、体も違う。
その自由さ、多様な響きに気付けることもまた、嬉しいことなのです。

それぞれの違う声が集まり、間や呼吸を少しずつ調整しながらも一緒に精一杯の声で朗誦していくと、最後にはひとつの大きな音の波となって広がり、また自分にもその響きが返ってきます。
朗誦が終わった後の余韻は、なんとも言えず清々しいものです。

『やまとかたり あめつちのはじめ』には、古事記の冒頭部分が書かれています。
最初の章では、読み唱えやすいように、読み下し文がひらがなで書かれていて、「やまとかたりの会」(月1回、横須賀市秋谷アカツキノイエで開催)では、この本をそのまま朗誦のテキストとしても使っています。

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