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望月の、欠けたることの…

望月新一教授がABC予想を解いたと聞いたとき、今まで感じたことがないような言い知れない感激を覚えた。僕は根っからの文系人間で、ABC予想が何を予想しているのかすらよく分からない。でもその日の夜、一人で車を運転していた時にも再び感動が蘇ってくるくらいに、なにかしら強く心を動かされていることに、自分でもちょっと驚いたくらいだった。

今まで、誰かがノーベル賞を取るたびに繰り返される馬鹿騒ぎにうんざりしていた。もちろんノーベル文学賞はね、まあ、あれ、ね、そういうモノでしかないけど、科学者にとってのノーベル賞はもっと重要であろうことは容易に想像が付く。それでも実際科学者と話すと、まあ、あれは取りやすい研究とそうじゃないのがあるから、とか、まあ言っても人種によってね、とか、複雑な反応にもまま出会う。大きなお金が動くし、大人の都合もね、ある程度はあるかも知れないけど、そもそも、なんというか、もっと「しっとり」祝うべきものじゃないかな、とは思うのよ。何十年も前にラカンに、日本人はノーベル賞を目指して仕事をする、なんて嫌味を言われて、それだって、良いよ、アジア人として沢山ノーベル賞取ってるのは凄い。でもあのマスコミを挙げての大騒ぎはね、ちょっと幼稚すぎて悲しくなる。

これはノーベル賞じゃなくて、証明だから!
しかも何世紀かに一度、世界に理解できる数学者が二十人いるかどうか、みたいな凄いことなんでしょ。
他の数学者が解説していた、「ノーベル賞を何個あげても足りないくらいの業績です」…やっぱりそこはノーベル賞換算なのかいっ😱…うん、でも言いたいことは分かる。
あまりに難しい論文だから査読に七年半もかかって、最後の方には教授も欧米系の学者から邪魔が入ってるんじゃないかと勘繰るくらいだったとか…

でも、これは、証明だから。MOCHIZUKIの名が世界史に刻まれる。とても偉大な、偉大なことだ。望月の欠けたることのなきを思えば。


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