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「光る君へ」うろ覚えレビュー《第32話:誰がために書く》

藤原道長時代の貴族たちというのは、なかなか皆クセが強く、それぞれに面白いエピソードがある。けれど、登場人物が多い大河ドラマではそれらを紹介しきれないのが残念。だが、このドラマはそれを描くのが目的ではないので仕方がない。

特に面白いのは、やはり藤原行成(当然。推しですから)、藤原公任、藤原実資、藤原顕光、和泉式部などだろうか。

清少納言はくせ毛でかつらを被っていたという話もあるし、しかも弟は惨殺されている。そこそこ目立つ方々の逸話は派手で面白い(中には面白いといっては失礼な話もあるが)。
そうです。あたしは平安ゴシップが好き。

(今回は、エル姉画伯に左腕を振るってもらった。)

■不快なり。藤原伊周&隆家Bro.

一体どうしたことでしょう。
藤原定子はかわいそうな后であった。あたしがイメージしていた女性とは描かれ方が少し違っていたが、「一条天皇をたぶらかした女」のように扱われる今回の大河ドラマのストーリーは、ちょっとお気の毒な気がしている。

そして、定子亡き後の藤原伊周&隆家兄弟が最近大きな顔で内裏をウロウロしている。

まず、伊周は一条天皇のちからを借りて脩子ながこ内親王の裳着の儀式、そして公卿たちによる合同会議である陣定じんのさだめにも参加。もうちょっと素直にというか、遠慮気味にというか「すいませんねぇ」という感じでアプローチすれば、まだマシなんじゃないかと思うが、伊周は不必要なくらい尊大である。そりゃ嫌われる。「俺だけが一条天皇に信頼されてる」感いっぱいだ。公卿とはそんなものなのだろうか。


誰かわかる? 
烏帽子がこうなったのは画面から見切れていたから。
(エル姉左手画)

そして弟の隆家は道長に一方的に親しげである。
こちらは「俺は兄貴とは違うっしょ? もっとデキるし」感いっぱい。この男は、(残念ながら)いずれ大活躍して国の存亡の危機を救うことになるのだが、そんなことになったら一体どんなに威張り散らすかと考えたら、気が重い。

いつもは温厚な藤原行成は、「伊周は帝を籠絡したてまつり」「隆家は左大臣様(道長)を懐柔する」と指摘したが、その通りだ。

■ああ、不快なり。藤原彰子

きれいな顔なんだろうけど。
ここまで徹底してどんよりした表情だと本当に彰子の顔が不快だ。
ぜんぜんきれいに見えない。
エモン(赤染衛門)ですら、彰子の性格については「ナゾですの」というくらい掴みどころがないのが彰子という女性だ。
いやホンマにドラマの彰子のこと好きっていう人、いてる?
史実では、賢明で優しく、定子の遺した皇子をきちんと養育した女性である。
ただちょっとだけあたしの目をひいたのは、一条天皇がまひろの書いた物語作品について興味を持ち、まひろという人物にも関心を寄せた様子を見た彰子の表情である。
もしかしたらうっすらとした嫉妬なのだろうか。
内裏における火事の場面では、一条天皇に手を引かれ、その優しさを少しは感じただろうか。


乙丸で心を癒やしましょう。(エル姉左手画)

■快なり!(←あ、これは「青天を衝け」ね)まひろの内裏デビュー

ついにまひろの書いた物語が一条天皇に認められた。
それを後ろだてる一条天皇の褒め言葉が最強である。

「書き手の博学ぶりは無双と思えた」

さらりとそう言った。
まひろの博学ぶりだけを褒めたようにも聞こえるが、素晴らしい褒めようである。「無双」だもん。

その言葉をもって、藤原道長はまひろを内裏に呼び、娘の彰子に仕える女房として迎えようとするのであった。

まひろは娘の賢子のことを考えて一瞬躊躇するが、もともとそんなに賢子と仲良かったわけでもないし(あたしの感想)、祖父となる為時の存在もあったので、ま、いっかー、という感じで内裏で働くことを受け入れた。

娘の賢子本人はちょっと不満げに母親のまひろに尋ねる。
「母上は私が嫌いなん?」
「そんなことあれへんで。大好きやで」
そしてまひろは賢子が母と一緒に行きたいのか、と尋ねるが賢子はNoといえる子である。
「Noー!」
だったら、文句言わないでちょうだいね、賢子。
そこでまひろは、
「寂しかったら月を見上げてみ。母も同じ月を見ているさかいに」
と言ったのだ。
しかし賢子は全く聞いてない。
「(内裏になんか)行かへん!」
そういってその場から去ってしまうのである。

ああ、そうですか。
あんたなぁ、母親のクリエイティブなええセリフ、ちゃんと聞け。
このまひろの月関連の言葉は、まひろと道長の間には通じたかもしれないが、道長の子であるはずの賢子には通じなかった。
やっぱ子供だ。

いよいよ内裏へ出発するというその日、家族みながまひろを送りだした。
いとはまたまた大げさに泣いていたが、この人の感情の振り幅はいつも広くて見るのが面白い。

送り出す父親の藤原為時がまひろに贈った言葉がよい。
「お前がおなごやったん、よかったわ」
涙を受かべてそういった為時。

「お前が男に生まれてたらなぁ…」
まひろが幼い頃に、漢詩をよく勉強するが漢詩を必要とする男ではなく女であったことを残念がって言った為時自身の言葉の裏返しだ。

そういうまひろの姿を亡き夫の藤原宣孝に見せたかったような気もする。
まぁ、生きていたら経済的にも困っていない宣孝は、まひろが好きすぎて内裏などへ行かせたくはなかったかもしれないが。

こうしてまひろは家族や道長などの重い、実に重いプレッシャーを両肩にかんじつつ、大勢の女房たちが冷ややかな視線を投げかける内裏へと踏み込んでいったのである。こっわー。


女官なんかな。
ボーリングのピンのトップの位置にいたあのひと。
まひろのこの先での宮廷生活を暗示しているような。
(エル姉左手画)