「光る君へ」うろ覚えレビュー《第5話:告白》
直秀がかっこいいんだが。
第4話でまひろは、五節の舞いの舞台の真っ最中に自分の母を殺した藤原道兼の弟が「三郎」であり、その人が藤原道長だということを知った。
第5話では、ついに2人はお互いが何者なのかを知った上で顔を合わせることとなった。
そのまひろと道長の二人が満月の夜に落ち合う手引きをしたのは、平安京のルパンこと直秀だ。
例の散楽師兼盗賊である。
一度は手引きすることを断ったくせに、結局はまひろと道長の密会を実現させてくれた。なんだかんだと言って、2人に優しい直秀。身分でいえば、2人よりもぐっと下がった下層階級だが、彼のほうが世間のことをよく知っているのかもしれない。とにかくそんな彼がカッコいいのである。
ひゃっと道長の馬の後ろに飛び乗ったり、屋根の上に現れる。
身は軽いし、頭の回転も速そう。
でもなんで直秀は2人に関わるのか。
いつも少し眉をひそめる謎の男、直秀。心から笑わないんだ。
誰がまひろの母を殺したのか。
五節の舞いの際に、まひろがショックを受けその後寝込んでしまった。
それは、「右大臣家の三男」という道長の本当の身分を知ったからではい。
まひろがショックだったのは、道長がまひろの母を殺した藤原道兼という仇の弟だったからだ。
彼女に言われるまで道兼によるまひろの母の殺害のことを知らなかった道長は、事実を知って当然驚く。
だが同時に
「俺は、まひろの言うてること信じるで」
と言った道長。
よく言った!
まひろも
「道兼のことは生涯呪ったる」
とは言うものの、
「三郎のことは恨まへん」
とも言ってくれてたのだ。
この密会は、ある意味成功だったと思われる。
母殺しの兄を持つ道長が一方的にまひろに嫌われ、彼らの仲が最悪となるかと思いきや、逆にもっと2人の絆が深まった気も。
大きな危機を迎えたかに見えた2人だったが、乗り越えられそうだ。
だがこの密会で同時に判明した闇がある。
それは、まひろがずっと母が殺された日の自分の行動を後悔していたということ。
まひろはあの日、三郎に会いたいがために道を急いだ。
そのせいで道兼を驚かせ、結局怒った道兼はまひろの母を殺害した。
そして、そうさせたのは自分のせいだと思い苦しんでいたのだ。
母に直接手を下したのは道兼だが、その遠因を作ったのは自分だと。
「自分のせいで母ちゃんを死なせてしもてん…」
泣くまひろ。自分を責めていた。
するとその時、道長がじわじわとまひろに近づくではないか。
お、お、お?
だが、結局道長ってばまひろに指一本触れない。
なんでや。ジェントルマンか。
道長さんよ、そこは黙って抱きしめるんとちゃうんかい。
あと1㎝手を伸ばしてせめて肩に手を置くとか。何を遠慮しとるねん。
屋敷に戻り、道兼をぶっ飛ばすためにまひろを置いて急ぎ立ち去る道長に、いきなりドラマのあとを任せられた直秀とあたしは同時にツッコミました。
「帰るんかい!」
その後きちんとまひろを無事に自宅まで送り届けてやった我らが直秀こそ、貴族ではないが立派なジェントルマンである。
さて、屋敷に戻った道長。
あの日のことを
「虫けらのひとりや二人、かまへんがな」
と毒づく道兼に対し、怒りの鉄拳を食らわせた。
確か、道長って「怒るのが嫌い」とか言ってたはずだが、この場合は非常事態です。普段怒らない人が怒ると怖い。
だがそんな道長に、道兼が精神的ボディブローをお見舞いする。
彼が
「道長が俺を苛立たせたんや。そのせいでイライラして女を殺っただけや」
と言い放ったからだ。
ということは。
道長が道兼をイライラさせたから、鬱憤たまった道兼はまひろの母を殺した。
それだけじゃない。
道長が待っていると言ったから、まひろはあの日道を急ぎ、道兼と出くわしてイラついていた道兼によって彼女の母は殺された。
つまり、全ては道長が原因だったの!?
これはなかなかきつい。
救いは、まひろの「道長を恨まない」とのひとことだけど。
恵まれてる人たち
当時の平安京は、食料も不足していたし、都のインフラも悪く不衛生な都で庶民たちは過酷な生活を強いられていた。直秀のような盗賊や、追い剥ぎのような者もいたし、治安はめちゃくちゃ悪かった。
寝殿造りの屋敷の中で、優雅な暮らしができる者など道長のようなほんのひと握りの貴族のみ。
道長の家つまり右大臣家では、主の兼家が、傲慢でありながらも家を繁栄させることに心をくだき、道長は圧倒的に社会的にも経済的にも恵まれた生活をしている。
庶民のなりをして市中を歩くことはあっても、幼い頃から百舌彦のような従者を従えて、恵まれ安全に暮らしてきたのだ。
そして、まひろのような下級貴族の家の者でも、父親に職があり、かろうじてながら乳母や従者などを持つことができるなら、その生活は庶民よりはずっとマシだ。
体調を崩したまひろのために、まひろの弟の藤原惟規もその乳母のいとも心を痛め、あたふたと世話を焼こうと懸命だった。父親の藤原為時も夜分まで帰宅しない娘の帰宅を心配しながら待っていた。
まひろの周囲には、そうやって心配してくれる人々がいる。
彼らに比べると、直秀は恵まれているとは言いがたい。
おそらく彼に家族などはいない。
だが、前述したように彼にはまひろや道長にない自由があり、信頼できる仲間がいるように見える。
ひとりぼっちの花山天皇
まひろや道長の守られている立場、そして直秀のような自由な立場。
だが、彼らと比べて花山天皇はどうだろう。
天皇といえば、権力と富を集めた人物のように見えるが、実際には孤軍奮闘に見える花山天皇の立場は、いかにも危なげだ。
今、ドラマ中で一番危なっかしい人といえば、この人物だ。
「関白、左大臣、右大臣のことなんか気にせず政治やったるで!」
と花山天皇は意気軒昂。
自分中心で世の立て直しに積極的だ。
だが、その周辺にいるのはロボットのようなイエスマンばかりで非常に危なかしい。仲間がいない。支える側近もいない。
実は、史実として花山天皇が頑張った記録は残っている。
当時ヤバかった朝廷の財政状況を立て直すべく、上級貴族たちが私腹を肥やしていた荘園という私有地を整理してきちんと税を取り立てようとしたのが花山天皇だ。悪い制度にメスを入れるため彼は頑張った。
そのあたりについては以下の本でも触れております。
ただし、悲しいかな理想と現実の間には隔たりがあった。
花山天皇による荘園整理令など、荘園のおかげでウハウハだった藤原兼家ら有力貴族たちが喜ぶはずもない。
ドラマでは、彼らにとって花山天皇はすでに邪魔者だ。
寵愛している藤原忯子も具合悪いし。
味方がいない。
花山天皇を守れる人、花山天皇の良い部分を理解する人がいない。
損得には敏感な公卿たちは、もう次を考え始めている。
おそらく自転車屋のじいさんも。
次回のドラマで花山天皇に一体何が起きるのだろうか。
本郷奏多さま、ポケモンカードの開封風景をYouTube配信している場合ぢゃないよ。
今後の花山天皇、どうなるの?
知ってるけど、知らない。