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つれづれ雑記 *我が家に妖怪が出没する話


 家人は洗い物をしない。
 食事に使った食器はもちろんだが、自分で使ったグラスやコップも洗わない。
 その頑なさはいっそ清々しいほどだ。

 食事やおやつの際は、まとめて洗ってしまうので別にいいのだけれど、問題は家人がひとりでコーヒーを入れて飲んだり、風呂上がりや就寝前に水など飲むのに使ったりした場合である。

 私は朝型なので夜は早く寝てしまうが、家人は夜型でわりと遅くまで起きている。

 なので、朝、私が起きてくると、台所のシンクにコップが置いてあることがよくある。
 置いてない場合は、娘2人のどちらかが自分が使ったコップを洗うついでに洗ってくれた結果なので、決して家人が洗ったわけではない。

 シンクまで持って行くなら洗えばいいと思うのだが、そこは頑なだ。

 一計を案じた。洗わずに放置しておいたら次に飲むときには自分で洗って使うのではないか。
 甘かった。
 水切りカゴに伏せてある別のグラスを出して使ったらしい。

 結果、シンクにはガラスのコップが2つとスプーンの入ったマグカップ(どうやら敵はコーヒーも入れて飲んだようだ)が並んでいた。
 水が入れてあったのは汚れが落ちやすいようにとの、せめてもの配慮(?!)らしい。
 
 しかもこちらの作戦を察したらしく、最近は水を飲んだ場合はテーブルにそのまま置いといて、自分が飲むときにまた使おうとするので、根負けしてしまう。
 そこまでして、なぜ洗わないのかがわからない。

 私はラジオが大好きで、台所ではラジオはほぼ一日中ついたままだ。
 あるとき、夕食時に流れていたラジオ番組で、「我が家の妖怪」というテーマでメール投稿を募集していた。
 聞いていると、靴下を表に返さず洗濯機に入れる「妖怪ソックスクルリン」だの、話を全然聞かずに返事だけする「妖怪ワカッタワカッタ」だの、いろいろあって面白かった。

 ふと閃いて、私は夕食後に番組にメールを送った。
「我が家には、妖怪コップ並べ、が出没します。洗っても洗っても、シンクには使ったコップがズラリ。ときにはスプーンの入ったコーヒーカップも。たまには洗わんかい」

 ちょっとだけ溜飲が下がり、私はお風呂に入った。
 しばらくして私がお風呂から出てくると、台所にいた娘たちが一斉に笑った。
 キョトンとした私に、家人が苦笑いしながら「どうも。妖怪コップ並べと申します。いつもお世話になってます」と言って、そそくさと2階へ上がってしまった。 
 どうやら私がさっき送ったメールが採用されて、私の入浴中に番組の中で読まれたらしい。
 
 パーソナリティさん、すごくウケてたよ、と娘が教えてくれた。

 ラジオネームだったけど、条件があまりにぴったりだから。市名も年齢も。間違いないと思った。
 と、娘2人はまたケラケラと笑った。


 この後、家人がコップを自分で洗うようになった、と書くことができれば感動的(?)かもしれないが、世の中はそう甘くはない。


 我が家には他にも「妖怪布団虫」とか「妖怪冷蔵庫ドアパタパタ」とか「妖怪朝走り」などの妖怪がいる。
 それはまた、別のお話。

**追記

 この記事は、私がフォローさせていただいている、まいまいままさんというnoterさんの先日の記事に、私が書いたコメントが面白いとまいまいままさんが言ってくださったので、更に詳しく書いてみたものです。


 まいまいままさんは、毎朝、読むと元気の出る、とても楽しい記事を投稿されています。
 まいまいままさん、ありがとうございました。

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