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息をするように本を読む 3


 本を読むことは私には特別のことではない。生活の一部であり、呼吸することと同じことだ。


 推理小説、というかミステリーを読み始めたのはいつからだったろう。
 小学生の頃は、子ども向けにリライトされた江戸川乱歩の明智小五郎や少年探偵団シリーズ、お定まりのシャーロック・ホームズにアルセーヌ・ルパンシリーズなどを学校の図書室で借りてわくわくしながら読んでいた。
 ミステリーの基礎中の基礎、入り口、というところか。


 中学2年のとき、友人に「本陣殺人事件」を借りて読んでから横溝正史ミステリを片っ端から読んだ。
「女王蜂」「悪魔が来たりて笛を吹く」「獄門島」「八つ墓村」等等。
 生首が出てきたり、血溜まりが出てきたり、なかなかにグロテクスだったが、作品全体を漂う芝居がかった、というか、独特のおどろおどろしたドラマチックな雰囲気が魅力的ですっかりはまった。


 ミステリーにはトリックは勿論だが、舞台設定やキャラクターが重要なのだと感じた。
 江戸川乱歩の幻想怪奇的な作品もこの頃、よく読んだ。
「パノラマ島奇譚」「黒蜥蜴」等等。
 ちょっと背伸びして、大人の世界を覗いた気になっていたのかもしれない。


 そんなものばかり読んでいた反動か、そのあと海外物にはまった。
 行ったことのないニューヨークやイギリスの田舎の空気に憧れた。
 「Xの悲劇」「Yの悲劇」からのエラリー・クイーン、「ABC殺人事件」「ナイルに死す」からのアガサ・クリスティー。
 夏休みの英語の課題でクリスティーの原作を読む、というのがあり、「そして誰もいなくなった」と「無実は苛む」を読んだ。クリスティーの英語は比較的平易で、辞書があれば読み易かったように思う。
 

 その次はまた、日本の作品に戻り、松本清張「砂の器」「喪失の儀礼」、夏樹静子「蒸発」「Wの悲劇」等等。
 奇抜なトリックよりも身近な社会問題や人間関係を背景にしたストーリーや、迷宮入りしそうな事件を地道な捜査で明らかにする警察物もよく読むようになった。


 それからも、名探偵の登場するとんでもトリック満載の本格ミステリーに夢中になったり、学校や喫茶店や書店が舞台のコージーミステリーにはまったり、人間関係ドロドロのイヤミスやリーガルサスペンスにも手を出してみたりと、やたら振れ幅の大きいミステリー歴を積んでいる。
 まあ、その話はいずれまた。


 ミステリーはジャンルはどうあれ、完全に没頭できる楽しさがある。文字通り寝食を忘れる。この先どうなるんだろう、早く知りたい、でも読み終えるのも惜しい。


 この楽しみを与えてくれた「本陣殺人事件」(を貸してくれた中学時代の友人)に深く感謝している。

 

 

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