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つれづれ雑記 *白いアスパラガス、の話*

 洋服や家電に流行があるように食べ物にも流行りすたりがあるらしい。 

 例えばデザート。

 私はあまり詳しくないが、昨年はマリトッツォと銘打たれたお菓子がコンビニの店頭に手を替え品を替え並んでいたし、一昨年はタピオカ?だったかな。

 ずっと以前ナタデココなるものが流行り、そのもっとずっと前にはティラミス。

 いっとき世を席巻する勢いで広まったあと、しばらくして、あー、あったね、そういうの、と言われるものもあるし、しっかり根付いて定番化するものもあったりする。

 デザートよりは緩やかだが、野菜果物にも流行があるのではないかと思う。
 
 年齢がバレるかも知れないが(え、もう充分にバレている?それはどうも)、現在は普通に流通しているもので、私が子どもの頃には売られていなかった野菜果物がたくさんある。
 ただそれは流行というより、冷凍冷蔵など保管管理システムや流通網の発達にも理由があるのかもしれないが。
 
 キーウィ。
 これを初めて見たのは中学生、いや高校生になってからじゃなかったかな。
 外の皮からは想像出来ない鮮やかな緑色にびっくりした。
 ケーキの彩りとして緑はそれまでなかったこともあってか、キーウィはたちまち人気者になった。
 おまけにビタミンがすごく豊富という宣伝効果も相まって、現在は完全にその地位を確立している。
 マンゴー。
 これについては語る必要はないだろう。
 今でこそ当然という顔で店先に並んでいるが、私が子どもの頃には遥か異国の果物だった。
 パプリカ。
 鮮やかな赤や黄色はパスタやサラダに入れると映える。最初の頃、父などは、プラスチックみたいだ、とちょっと嫌がっていたが私は好きだ。
 ズッキーニ。
 あの、キュウリに似た見た目からは想像できない不思議な食感。煮ても焼いても美味しいし、何よりちょっとオシャレだ。
 
 ここ最近では、スナップエンドウだろうか。わりとしっかりした見た目なのにサヤごと食べる、というのがなかなか周知せず少し伸び悩んでいたが、地道な広報活動により定着してきているようだ。
 
 そして、これは若い人たちには驚かれるかもだけど、私の子どもの頃にはブロッコリーはほとんど売られていなかった。
 これも初めて食べたのは中、高校生くらい、だろうか。

 あの鮮やかな緑。それまであの色の野菜は、ほうれん草やピーマンしかなかったから、実家の父は最初、気持ち悪がって食べなかった。あの、いかにも野菜野菜した青臭さも苦手だったらしい。
 私はむしろ野菜の青臭さが大好きだったので、その美味しさに感動した。
 当時よく売られていた白いカリフラワーに似ているので、色が違うだけで同じものだと思い込んでいたが、そうじゃないことは後で知った。(仲間ではあるらしいが)
 
 緑と白の野菜といえば、アスパラガスがある。

 今、アスパラガスといえば、グリーンアスパラガスが主流だろうか。
 あれも昔はなくて、私が小学生の頃に初めて食べたアスパラガスは白かった。
 こう書くと、よくご存知の方々は、あー、あの、ドイツでよく食べられている「シュパーゲル」のことね、と言われるかも知れない。
 申し訳ないが、全然違う。いや、正確にはモノは一緒、なのかな。

 私が食べたことがある白いアスパラガスとは、水煮の缶詰のことである。
 細いジュース缶くらいの大きさで、開けるときに穂が潰れるので必ず底から開けるようにとの表示があった。(当時はパッ缶などないので缶切りで開けるのだ)
 子どもだったので値段は覚えていないが、生の野菜が高くなる季節には母は重宝していたのだろう、サラダやシチューなんかによく入っていた。

 今だから正直に言うが、私はこの缶詰のホワイトアスパラガスがちょっと苦手だった。(お好きな方、ごめんなさい)
 生のものを焼いたり煮たりしたら美味しいのだろうが、缶詰の水煮の場合、味が薄い。そして柔らかくて(柔らか過ぎて)歯応えが無い。
 申し訳ないが、サラダに乗っているのを見るとこっそりため息が出た。

 生のグリーンアスパラガスを茹でたものを初めて食べたときは、ブロッコリー以上に感動した。しっかりした野菜の濃い味がする。歯応えもいい。
 
 グリーンアスパラガスとホワイトアスパラガスは、元々は同じもので育て方が違うのだとか。早い話、日に当てずに育てると白くなるそうだ。
 日本には、ホワイトアスパラガスが先に入ってきていて、大正時代から北海道で栽培され、缶詰にされてヨーロッパに輸出されていた。
 日に当てて育てるグリーンアスパラガスが流通し始めたのは、40年くらい前。
 そして現在、日本ではグリーンアスパラガスの方が人気があり、ホワイトアスパラガスはあまり栽培されていないらしい。

 でも、ドイツを中心とするヨーロッパでは、今もホワイトアスパラガスのほうがよく食べられていて、特に旬の春には「シュパーゲル(ホワイトアスパラガス)祭り」が盛大に催されるそうだ。
 缶詰でなく、生から茹でたり焼いたりした物はまた違う味なのだろうか。

 そういえば、あのホワイトアスパラガスの缶詰は最近見なくなった。
 大きな店舗に行けばあるのかもしれないが、少なくとも私がよく行く店にはない。

 特に好きだったわけではない(どちらかと言うと苦手だった)が食べられないと思うと、もう1度食べてみたいかな、などと思ってしまうのは、勝手なものだ。

 ***追記***
 
 と思っていたら、この記事を書いてしばらくして、よく行くスーパーでホワイトアスパラガスの水煮の瓶詰めを見つけた。
 何とはるばるペルーからやって来たという。
 何十年ぶりかの邂逅だった。
 
 
 
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