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つれづれ雑記 *お歳暮の中身、の話*


 クリスマスも過ぎて、いよいよ年の瀬。
 急き立てられるのは苦手だけど、この時季、街中に満ちている何となくウキウキした華やかな雰囲気は嫌いではない。

 年末の恒例に、お歳暮、がある。最近のお歳暮事情はどうなっているのだろう。昔ほど盛んではないのかな。
 でも、贈答品のパンフレットや広告を、この季節になると相変わらずよく見る気がする。

 
 我が家は夫婦ともに世間が狭く、おまけに数少ない親戚も皆、さっぱり過ぎるほどあっさりした付き合いを好むメンツばかりということで、現在の我が家にはお歳暮、お中元の類いはあまり縁がない。

 私の実家では、父が仕事をしていた頃、現場でたくさんの下請け業者さんと関わりがあったこともあって季節ごとの届け物が結構あった。

 私は子どもの頃、あのお歳暮やお中元は中身がみんな決まっているのだと思っていた。

 実家に送られてくる届け物はほとんど全部酒類だった。(ごくたまにサラダ油や鰹節のこともあったけど)
 夏は、つまりお中元はビールか冷酒、冬は、つまりお歳暮は迎春用金箔入りの日本酒かちょっとお高い洋酒の詰め合わせ。

 荷物が届くと、父はいつもまず箱を手に持って軽く左右に揺すり、チャプチャプと音がすると、ニコニコしながら包装を開けていた。
 ごくたまにサラダ油の詰め合わせだったりすることがあって、そういう場合は苦笑いをしていたのを思い出す。
 でも、だいたい、8、9割の確率でお酒が入っていた。
 
 そのため、私はその手の贈答品には、酒か鰹節、サラダ油以外は存在しないと思っていた。
 そんなことがあるわけはなく、もっといろいろ選択肢があると知ったのは、大学生になってからのことである。

 学生になってちょっと街中の学校に通うようになり、交友関係も少し広がってきた頃、よく不思議に感じたのは、友人たちが皆、モロ◯フだの、ゴンチャ◯フだの、ユーハ◯ムだの、やたら高級な洋菓子をよく知っていることだった。
 最初は、私以外の同級生の家はお金持ちが多いからかな、などと思っていたが、いくらお金持ちでも、自宅で子どもが普段食べるのに高級洋菓子店のお菓子などそうそう買うわけもない。
 こっそりと聞いてみると、「お客さんがお使い物で持ってくるとか、あと、お中元やお歳暮でもらったりしない?」ということだった。
 えっ、そうなのか。
 我が家に来るお客さん、そんなハイカラ(死語)な物は誰も持ってこないぞ。お中元でもお歳暮でも、お菓子なんぞついぞ見たことがない。
 いつでもどれでも、日本酒、ビール、ウイスキー。たまにサラダ油。

 カルチャーショックを受けた。
 そうか、日本酒やビール以外の贈答品もあるんだ。お菓子とかジュースとか。

 父は若い頃、結構な酒豪だった。
 つまり業者の方々にしてみたら、日頃世話になっている父本人の好きなものを選ぶのが当たり前じゃないかというわけだ。
 ありがたいお話なのだけれど。
 
 今の時代なら、ときには奥様や子供たち、家族みんなが喜ぶものを、とかいう話も出るのだろう。

 元中日ドラゴンズ、阪神タイガース、楽天イーグルスの名監督にして闘将星野仙一さんは、選手の奥様の誕生日に花束をプレゼントしていたそうだ。選手を支えてくれているのは家族、選手がいいパフォーマンスをできるのは奥様のおかげだから、と言って。

 まあ、これは星野さんだから出来ることであるし、昭和の高度成長期時代、仕事一筋の重工業の現場のおじさんたちにそんな発想を望むのはちょっと無理だったな、とも思う。

 時代だねぇ。


 

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#初めてモロゾフプリン食べたのはいつだっけ