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今更ながら人類滅亡後の小世界をPinocchiaたちと歩いた話・5機目

第五階層:士官居住区
「狂気の洪水、沈む箱舟」

 第五階層にたどり着いた主人公サンとお供たち。
 ここでも冒頭で主人公の回想が入った。軍上層部の会議のようだ。上座にいるのは……主人公? やはり相当格上の人物なのか? 第一階層での回想に出てきた女医っぽい人もいる。主人公を執刀したメガネの女性。

 議題は寄生体感染者の処遇。手術で患部を除去という治療法はあるが、成功率が低く後遺症が起きやすい(主人公もそれだ)。そもそも感染者を検出する方法……というか、検出する側の人間が感染者でないことを保証する術がない。そこを何とかしないと血液検査の信頼性が揺らぐ。
 と、上座の人物が何か発言したらしい。セリフ無しであたかもドラクエ型主人公のように。間違いなく主人公その人だ。どうやら主人公は血液を常時モニタリングして寄生の有無を監視できる、人体装着型の装置の製造を進言したようだ。周りの人物の発言から察するに。そして自らその実験台に名乗りを上げる。そう、あの奇妙なマスクは血液監視装置だったのだ。
  ちなみに血液監視装置のインプラントと、寄生体の除去手術は別の出来事なのね。前者は身体的負担が大きいとしか言われていない。重要臓器を傷付ける恐れがあると言われたのは後者だ。つまり主人公も一度寄生体に侵され、しかし監視装置で早期発見できたため凶行奇行に走る前に除去手術に踏み切れた。ハイリスクな手術だが、寄生体感染は司令として論外なのだから他に選択肢はない。

 第五階層に突入。SFな扉をくぐると池に何か落ちている。情報だった。
 誰かの最期の言葉のようだ。おそらく第三階層から出発し、各所にちょくちょく情報を残していったと思われる新兵の。新兵のいた部隊は全く予想外の強敵――仮称「死神」――に襲われ、なす術なく壊滅。唯一生き残ったアンドロイドに人類復興の望みを託し、新兵は絶命する。
 ……その情報の最後のページが記事冒頭の画像である。主人公!? 新兵は主人公の娘? 入隊前は守られる立場だったとあったが、単に子供だっただけじゃなくそういう身分だったのか。軍の上官だった父親の意志を継ぐべく、自らも軍人として戦ってきたがあと一歩及ばなかった。ここは第五階層、ゴールの第六階層まで本当にあと一歩のところだった。
 それはそうと、娘の顔が汎用型そっくりなのは偶然ではないはずだ。いや汎用型が娘に瓜二つと言うべきか。アンドロイドの顔って製造時に自由にカスタマイズできるのだろうか。ああでも第一階層の自動工場で倒れてた汎用型も同じ顔だった……のか? それともゲーム上の都合なだけで、倒れてた方と自分で造る方は顔は違う? どうなんだろう。

 拠点の探索を開始。さすが終盤、情報の宝庫であった。
 まずは右下の部屋へ。あ、メガネ女医……の立体映像だ。「申し訳ありません、司令官」。先の回想で薄々気付いてはいたが、主人公は軍司令官だったすなわちセ・キ・ローダーの最高権力者だった。その司令官が非常時にコールドスリープという由々しき事態になってしまい、おまけにそのわずか2ヶ月後に例の敵性機械群が出現。これのせいで主人公の後遺症治療計画は完全に頓挫してしまった(つまり主人公は、もう絶対に助からない)。
 そしてスリープ前、自分の留守中に最悪の事態が起きた場合を想定し、主人公は女医にある条件でコールドスリープを自動解除するよう設定させた。おそらく条件は人類の滅亡。最初に主人公が部屋で独り目覚めた時、彼は事態を把握していたのだろう。もう自分が、一人で何もかもやるしかないと。やり遂げるしかないと。
 室内の金庫には女医が主人公のために残した物資があった。応急修理キットとシールド発生装置はいいが、栄養剤(違法薬物)……いや、こんな物にまで頼らざるを得ない事態を想定しての備蓄だ。何も間違ってはいない。
 この部屋には残骸も2つある。そのうちの片方の内容が、レーザー装置とレンズ、骨、メガネ。女医の武器と死体だ。残念ながらこの残骸を見た時、私は何の感情も抱けなかった。何故ならコメントで先にネタバレされてたから。いやだって普通、人の姿が見えたら真っ先にそっち向かうよね? 今までずっと無人だったし。それはさて置き、この忠臣の亡骸はさすがに分解炉に投じるのは忍びない。いつか丁重に埋葬できる日までひとまずこの場に置いておこう……というRPの下、拾わず放置することにする。

 次はその向かいの部屋……は、なんかロックされているので隣の部屋。会議室だ。さっきの回想で出てきた部屋か。
 まずは第三階層でも見たCELSSについて。単語の意味そのものはQoLとは違ったが、情報の言いたいことは大体一致していた。狭い閉鎖環境での共同生活は不和を生みやすい。で実際、セ・キ・ローダーでは住民の不満が絶えず治安は悪化。寄生体だけのせいではないだろう。そこに教団という軸、軍という敵を得ることでますます事態は過激化していった。

 で、軍は最終的にどうしたのか。皆殺しにした全てを
 敵性機械の設計者は軍だった。あらゆる人間を例外なく抹殺するよう設定した兵器の量産を、無期限で各自動工場に指示。教団信者も寄生体感染者も殺し尽くす。軍関係者を例外設定しなかったのはおそらくアリバイ作りのため。その後どこかの段階で軍が出動し兵器群を鎮圧、事故として処理する。遺族には適当にごめんなさいする――実行者曰く、セ・キ・ローダーという名の箱舟に対する「洪水」。最高司令官たる主人公のいない所で士官のうちの誰かが勝手に実行した、壮大なマッチポンプこそが人類滅亡の直接の原因だった。
 狂気の沙汰である。例外設定なしということは、教団とも寄生体とも無関係な者、果ては同じ軍関係者まで無差別ということである。誰をどれだけ殺した段階でやめるつもりだったのか? 事故として処理ということは、自分は生き残るつもりだったのだろうか。どうやって? 全てが終わった後に信者や感染者が生き残っていない保証もない。軍の中にも教団支持者がいるとも言っているが、軍人なら当然民間人よりも生き残る可能性は高いだろう。根本的に穴だらけなのだ
 何よりこの計画は、人類滅亡という本末転倒過ぎる結果に終わっている。主人公の娘が入隊したのは敵性機械の出現から実に10年後のことだが、「洪水」の実行者の予定では1週間で事態を収拾できるつもりだったらしい。見積もりがガバガバにもほどがある。ヒステリーに囚われた末の見境のない短絡的な犯行。ある意味教主や、違法アンドロを従えた大量殺人鬼らとどっこい……いや決定的に違うか。実行者の手には大量殺戮兵器のリモコンがあったという点が。

 そんな寄生体の存在そのものを疑問視する意見も見つかった。だが私は、寄生体(と、それに操られた人間)自体は少なくとも存在していたんじゃないかと思う。妄想に染まって暴走した教主だが、それ以前の正気だった頃の研究結果は信用していいはずなのだ。ラットの実験とかAbTとか。女医も寄生体の検出および除去手術の手法を曲がりなりにも確立させている。何の根拠もなしにそんなことはできない。
 だがかといって、寄生体がどの程度一連の事件に関与しているのかもまた不明である。先述した通りただでさえ住環境が劣悪な中で、人間の心理として現実的な範疇で起こし得たであろう行動もまた多いのだ。教主も洪水実行者もそうだ。しかし一方で、彼らが寄生体の感染者ではなかったという根拠も特に見つかっていない。真相はまだまだ見えないのだ。

 会議室には司令代理、おそらく主人公の腹心らしき人物の立体映像もあった。主人公の娘が煙幕手榴弾を山ほど持たされたエピソードが以前あったが、その持たせたのがどうやら彼のようだ。10年もの間娘を守り続けてくれたらしい。できれば会って事情を説明したかったというが、私も今ここで一通り話してほしかったぞ。時間がなかったのは分かるが。

 最後に、全く意味不明な情報が1件あった。何者かがセ・キ・ローダーのセキュリティにハッキングを仕掛けている。よっぽど身分が低いのかろくな権限を持っていない人物のようで、何かの命令を遂行すべく最低限の権限を得ようとしているようだ。一体何者なのか?


 いい加減情報の食べ過ぎな気がしてきた。ゲームの話に移りたい。
まずは速攻型の製造だ。名前はウラヌス。天王星だ。太陽系もいい感じに残りわずかになってきた。

『速攻型アンドロイド』
 最速行動の実現を目指して設計されたアンドロイド。スキル「先手必勝」により誰よりも、主人公よりも早く動く先制攻撃を得意とする。
 攻撃力は運搬型と同等。電磁パルスを帯びた斬撃は相手に確定で命中率25%低下のデバフを与え(1ターンで消失。小破や中破などと重複可)、倒し切れなかった場合でも敵の攻撃を抑制できる。
 機体の軽量化の弊害か、耐久面は索敵型をも下回り最低。だがアタッカーとして運用するなら危険を押して前衛に出さざるを得ない。デリケートな取り扱いが必須となる。

 両腕が刃になっている、どこから見ても完全に戦闘用のアンドロイド。シャープで無駄の少ない造形、素早い身のこなしは忍者や暗殺者を連想させる。会話も無駄を省いた(省き過ぎた)機械的なものばかりだが、よく読むと自分をアピールしたりする自信家の面も見え隠れする。

 拠点には第四階層にあった修復カプセルもあった。2つも。両方壊れている。ここで思い出したのだが、第四階層のカプセルは結局一度も使わなかった。さらに思い付いたのだが、就寝前に1機カプセルに入れるだけでノーリスクで毎日1回利用できるじゃないか。もったいない……完全に直し損であった。今度はちゃんと使いたい。
 さらには主人公が着用できる強化外骨格の装着コーナーもあった。これも要復旧。コアが必要だがちょうどもう1個持っているので問題ない。装着! Daddy Cool! この終盤において主人公の正体が開示されたタイミングでのコスチェンという熱いイベントである。変身ヒーローとか魔法少女モノにも新フォームとかあるだろう? それよ。

『主人公:セ・キ・ローダー司令官』
 セ・キ・ローダーの最高権力者。部下の士官らと共に腐敗したシェルター内の秩序の回復に努めるも、教団との対立、住民の不満の解消には至らず、逆に混迷を深める結果となる。そんな中装着していた血液監視装置により寄生体の感染が発覚、行った除去手術の弊害で余命30日の体になってしまう。

 臓器再生技術の発掘に希望を託しつつコールドスリープに入った直後、敵性機械の侵略が始まり最終的に人類は滅亡。事前の設定によりスリープが解除され、目覚めた彼は現状を認識する。自ら製造したアンドロイドたちと共に、最後の人類として敵性機械の殲滅と人類復興を胸に動き出した。

 うーむ。思えば異様なスゴ味のあるあの目つきは、覚悟完了した男のものであったか。司令官として、人類最後の一人として立ち上がった者の。
 司令官に就任する前のプロフィールは不明だが、士官たちとの距離の近さ、何より銃器を一端に扱えるところからして軍人だったのは間違いあるまい。それこそ軍司令、前委員会の一員だった可能性も充分ある。すなわちクーデターの参加者あるいは首謀者。主人公はかねてから味方を切り捨て先へ進もうとしてきたのだ。アンドロイドたちを使い潰しながら殺戮の野に活路を見出す、この舞台に彼が立ったのは皮肉な必然だったのかも知れない。

 主人公がクーデター以外に何をしたのか、どんな姿勢でどの程度軍の施政に関与していたかも明らかでない。住民の不信を招いた施策、教団との対立、教主の抹殺(「洪水」は主人公の仕業ではない可能性が高い。会議室の主人公以外の席にあった端末の当該情報が、実は主人公が書いたものでしたなんてのは作劇的にアンフェアだろう)。ひょっとしたら、人類が死に絶えたのはほとんど主人公のせいなのかも知れない。逆に直接関与した事案はほとんどなかったとしても、最高責任者として部下の暴挙の数々を止められなかった責任は重いという見方もあろう。
 だがもし仮にそうだとしても、今となっては主人公を責めるには当たらないと私は思う。彼は充分報いを受けた。妻は死んだ。娘も死んだ。同僚も皆死んだ。守るべきはずだった住民も全員死んだ。彼の本意ではあるまい。悪政のツケはすでにこれ以上ないほど支払わされたはずだ。
 「洪水」実行者にせよ司令官たる主人公にせよ、個人の罪の重さを問う局面はもはや過ぎた。今はただ、残された命を果たすべきことのために使う。使い切って死ぬ。きっとそういうことなのだろう。


 ……ゲームの話に移りたいとか言っておきながら、結局ダラダラと思うことを書き連ねてしまった。一旦ページを移り、次回から第五階層の探索の話にしたい。


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