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【赤の少女と白い虎】 21夜. 力の代償

◇  前回のお話

◇  1話目: はじまりの物語

。・。・。・

「わたしは……」

真っ白になったまま、口から言葉が飛び出した。

「ただ、人に認められたかった。

愛しているよ、といわれたかった。

やさしく抱きしめてもらいたかった。

どんな時も自分の足で世界に立ち、生きられる自分になりかった。

そうなれると思ったんです」

気づくとそれは叫びに変わっていた。

「なんとくだらない」 「愚かしい人間どもめ」 「そんなことで我らがここにいるとは許せぬ」

そんな怒号も何の意味もなさず、何も感じなかった。 どうせもう死んだのだ。すべては終わったのだ。

「まあ待て」あの声が響いてきた。

ピタリと空間は静まり返り、その声はこういった。

「娘よ。お前は愛されたくて力を求めたのか。2頭の龍の力をもてばそれが叶うと思ったのか」 「……はい」

もうどうでもいい。そんなことは。

だがその声はそのまま静かに続けた。

「お前が望むありようと力は関係がない。お前がいう愛されること、ましてや愛することに力は不要だ。お前は支配と愛と調和をすべて願っていた。その違いを知らないままに。そこを欲望につけこまれたのだろう」

我慢しきれなくなったかのように怒号が一気に飛んでくる。

「だから人間は無駄だといっている」 「こうやって面倒を起こす」 「昔から変わらぬ、愚かな生き物め」

「まあ待て」ひときわ深く、あの声が制した。

「この力の発動の源が見えたいま、我々は決断をしなければならぬ」

「早いところ終わらせようぞ」 「またひとつ貴重な宇宙を失うのか」 「つまらぬ」 「だがしょうがない」「腹ただしい」

何の話かまったくわからないまま、呆然と話を聞いていた。

「この娘は門を閉じる術式を書かぬまま開いてしまった。何をもって閉めるか。それを決めねばならぬ」

「……え?」思わず声が出た。くだらないことではあったが、それでもわたしのおこなった術式は本の通りに完璧だったという自信があったからね。 わたしがミスを犯したのだろうか?

「娘よ、そうではない」

あの声がいった。


〜つづく

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