【羽根堕ち】第3話 出立
扉をくぐると、そこは見慣れたアイラの家の脱衣室だった。ぐるりと見回してもおかしなところは何もなく、突風が吹き荒れたとは到底思えない。台所から居間を通って寝室へと向かいながらアイラはぎゅっと唇を噛み締めた。
(夢ならいいのに。ここを開けたら母さんがいて、変な夢だね、なんて笑って……。そうならいいのに)
扉にかけた手が震える。心臓が痛いほど高鳴り、自然と呼吸が浅くなる。ザイロが心配そうに見上げてくるのがわかった。アイラは強張った頬を無理矢理動かして口角を上げ、ザイロとトロン