マガジンのカバー画像

その羽根は闇に堕つ

16
邪神に関わったことで家族を消されてしまった少女アイラが生きるために戦うファンタジー小説。
運営しているクリエイター

記事一覧

【羽根堕ち】第16話 メナード

『それじゃ、俺は主にこの事を報告してくるよ』  トフはそう言うとひらりと手を振って姿を消…

あかる
5か月前
1

【羽根堕ち】第15話 方法

 金色の光を呼吸するように明滅させる世界樹。それを取り囲む虹の結界。目の前に広がる光景に…

あかる
5か月前

【羽根堕ち】第14話 世界樹

 それから移動を続けること数日。ジェナにも少しずつ笑顔が戻り、前のようにザイロとはしゃぐ…

あかる
5か月前

【羽根堕ち】第13話 心配

 念のため周囲を警戒しながらミョーを出る。人々は思い思いの仕事に勤しんでおり、アイラたち…

あかる
5か月前

【羽根堕ち】第12話 願い事

「サロニカちゃん、だめ。考え直して」  イサドラが懇願しながらサロニカの腕を叩く。けれど…

あかる
5か月前

【羽根堕ち】第11話 クリスタル

 トロンのいるあたりを中心に、びりびりと空気が震える。足元には氷の矢だったものが粉々に砕…

あかる
5か月前

【羽根堕ち】第10話 因縁

 丁寧に巻かれた灰色の髪。鋭くこちらを睨む青い目。手に握られた水色の槍。現れたもう一人の女性は、まっすぐザイロを狙うと詠唱を続けた。 「解き放て!」  次の瞬間、槍は勢いよく滑り出す。ザイロではなくジェナに向かって。 「! 危ないっ」  とっさに、アイラはジェナの腕をつかむと強く引き寄せた。小さな体を庇うように抱き締めた、その腕に槍がわずかに触れる。 「ぐっ……」  かすっただけとは思えない鋭い痛みにアイラは思わず顔をしかめる。巫女の女性が焦ったように叫んだ。 「サロニカちゃ

【羽根堕ち】第9話 光の神

 吹き渡る風に緑の稲穂が揺れている。広々と水を湛えた田んぼの向こうには畑が広がり、野菜が…

あかる
5か月前
1

【羽根堕ち】第8話 ジェナ

 風が吹き、アイラの髪をなびかせる。ざわめく葉擦れの音に草を踏みしめるジェナの足音が重な…

あかる
5か月前

【羽根堕ち】第7話 ナイラ

 数秒の沈黙。アイラが不安を覚え始めた頃、オルフェは冴星のような目でじっとアイラを見ると…

あかる
5か月前
1

【羽根堕ち】第6話 オルフェ

 しばらく歩くと、いつの間にか周囲は高木に囲まれた森になっていた。川の水は透明感を増し、…

あかる
5か月前
2

【羽根堕ち】第5話 懸念

 しばらくして、ジェナが落ち着いてくるとアイラは再び地図を開いた。ひとまずミョーを目指す…

あかる
5か月前

【羽根堕ち】第4話 少年

 柔らかな日差しが水面を照らす。ぐったりと目を閉じたままの少年を見守りながら、アイラは川…

あかる
5か月前

【羽根堕ち】第3話 出立

 扉をくぐると、そこは見慣れたアイラの家の脱衣室だった。ぐるりと見回してもおかしなところは何もなく、突風が吹き荒れたとは到底思えない。台所から居間を通って寝室へと向かいながらアイラはぎゅっと唇を噛み締めた。 (夢ならいいのに。ここを開けたら母さんがいて、変な夢だね、なんて笑って……。そうならいいのに)  扉にかけた手が震える。心臓が痛いほど高鳴り、自然と呼吸が浅くなる。ザイロが心配そうに見上げてくるのがわかった。アイラは強張った頬を無理矢理動かして口角を上げ、ザイロとトロン