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活字で泣いたはじめての記憶【わたしの読書道①〜幼少期〜】

「web本の雑誌」の連載『作家の読書道』が大好きです。2023年4月時点で、250人を超える日本人作家に読書遍歴をインタビューしているのですが、この連載のなにがすごいって、聞き手である瀧井朝世さんの本にまつわる膨大な知識量!

国内外問わず、絵本でも小説でも実用書でもオールジャンルを網羅する瀧井さんの知識の深さがあってこそ、話し手(この場合は作家さん)が気持ちよく「好きな本」「人生に影響を与えた本」について話せるというもの。

この連載インタビューを読んでいると、作家さんたちがノリノリで話している様子が浮かんできて、相手の本質に迫るインタビューとはこういうものだと改めて気づかされます。

そこでわたしも、自分の読書遍歴をまとめたい欲にかられたので、この場を借りてちょっと紹介させてください。『作家の読書道』では、まず「一番古い読書の記憶を教えてください」との問いかけから始まるので、それにならってわたしも一番古い読書の記憶を辿ります。

『さっちゃんのまほうのて』(たばた せいいち 著)

幼稚園のころ、先生が読み聞かせてくれた『さっちゃんのまほうのて』は、幼いわたしに強烈なインパクトを与えました。自分自身に起こった出来事以外で、それも本を読んで(もらって)わんわん泣いたのは初めてでした。

右手の指がない状態で生まれてきたさっちゃんが、心無い言葉をお友だちからぶつけられたとき、お父さんがかけてあげた言葉はさっちゃんの心だけでなくわたしの心にも刻まれました。今でも思い出すだけで涙があふれてしまうのはこの絵本だけです。

『くるみわり人形』(ホフマン 作)

小さいころからおとぎ話はそんなに好きではなかったのですが、『くるみわり人形』だけはなぜだか心の片隅にずっと引っかかっています。きっと物語全体に漂う不穏な空気感というか、恐怖心と好奇心が絶妙に刺激される感覚を初めて味わったんだと思います。7つの頭をもつネズミなんか想像しただけで恐ろしいけど、お菓子の国はやっぱりワクワクするし、くるみわり人形は素敵。小さいころ、おもちゃや人形を飾るガラス扉の大きな棚にとても憧れていたことを思い出しました。

『青ひげ』(シャルル・ペロー 作)

『くるみわり人形』同様、好奇心と恐怖心が刺激される物語が好きなわたしにとって、『青ひげ』も大きな衝撃を受けたお話です。結果的に青ひげは凄惨な最期を迎えるけど、果たして本当に悪いやつだったのか? いや、もちろん悪い男なのだけど、そんな単純な話ではないことは、幼いわたしにもわかりました。大人になって読み返すと、やっぱりちょっと青ひげをかわいそうだと思ってしまったのでした。

『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス 著)

挿絵のない活字だけの本を読んで初めて泣いたのは『アルジャーノンに花束を』です。その「活字で泣く」という経験は、その後の人生で何度も味わいましたが、やっぱり初体験として強く心に刻まれていると感じています。

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他にもたくさんありますが、「幼少期編」はひとまず終わり。次は「思春期編」に続きます。今のわたしのベースとなっているのは、やはり多感な思春期に読んだ本であることは間違いありません。理屈ではなく本能的に惹かれる本は、何度読んでも新鮮な感動を味わうことができます。


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