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檸檬と薔薇【ノンフィクション】

「檸檬」という小説がある。
詳しい説明はしない。

「丸善」という本屋がある。
どこにあるかは、言わない。

私は、先日、丸善に行った。
詩集のコーナーを探した。

詩の本が並んでいた。
私は、そこに一枚の紙を置いた。
本のタイトルを隠さないように、
本の配置を、少し動かして。

なんてことのない紙だった。
ありふれたノートのページを、
一枚破って、絵を描いた。

紙を折って、造花の薔薇をのせて、
そして、逃げるように、
私は本屋を後にした。

お客さんや、店員さんに、
気づかれなくて良かった。

私の描いた絵の裏側に、
詩を書き写した。
全ての言葉を、
書くスペースがなかったから、
ここだけは書きたいと、
思った箇所を抜き書きして。

紙の表側の、
左半分は、私の描いた絵で、
右半分は、裏側の詩人さんの
名前とプロフィール。

詩人さんの名前が、
見えるように、
紙を置いた。

だって、ここは、
詩集コーナーなのだから。

私がやった行動というのは、
非常識な行動で、
本屋さんに迷惑かけて、
だから、誰かに相談しても、
反対されることは、
わかっていた。

誰にも理解されないことは、
わかっていた。

だから、黙って、
一人でやった。

自己満足。
そうだ。
その通りだ。

私は、勝手に、
自分の心の中で祈った。

「詩人さん、あなたの詩」
「並べておきました」
「本屋さんに、詩集コーナーに」
「あなたの名前を」
「書いて、飾りました」
「あなたの作品が」
「本物の本屋さんに」
「並んでいます」

何をやっているのか、私は。

家に帰った私は、辞書を引いた。
「冥福」という言葉を引いた。

【冥福】
死後の幸福。また、死後の幸福を祈って仏事を営むこと。「ーを祈る」

ああ、そうか、今の今まで知らなかった。

「ご冥福をお祈りします」と、他の人が書いている文章を山ほど見てきたけれど、どんな意味があるのか、私は知らなくて。

だから、意味を知らないから、言えなかった。
定型文であることは知っていたけれど。

意味のわからない言葉を、
言いたくなかった。

自分の知っている言葉で、
話したかったから。

だから、
「ご冥福をお祈りします」
ではなくて、
「あなたの、お幸せをお祈りします」
と言って、
亡くなった人を、
死後の幸せを願って、
お見送りしたい。

亡くなった詩人さんが、
どんな思いで、
丸善の本棚を、
見つめているか、
私は知らなくて。

本を出したい人は、
大勢いて、
本屋さんの本棚の、
物理的スペースには、
限りがあって。

だから、
ごめんなさい!

全部、私の自己満足です。

全力で、世界中の人に謝りたくなる。

私って、そんな人。

チャリーン♪ しあわせに、なーあれ(о´∀`о)