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深夜2時、思い出してしまった

ほとんど人通りのない横断歩道の信号が、緑から赤になり、赤から緑になった。
通る人もいないのに、信号機は決められた通りに車を止めては流していった。
そんな様子をひたすら眺めていた。
月は、最初に見た時よりほんの少し高くなって、蝉の声はほんの少し大きくなったような気がした。

もうどうでもいいと思った。
どうにでもなれ、とも、どうにでもなってくれ、とも思いながら、両手で握りしめたスマホに目を落とした。
視界がぼやけて、風が吹いた。
目に溜まった涙も、波打つことを知った。
海かよ、しょっぱい水が波打ってるなんて、とか考えてみたりした。

腰掛けたガードレールに、お尻が食い込んで痛かった。
でもその痛みよりも立ち上がることの方が嫌だった。
時刻を確認すると、座ってから1時間ほど経っていた。

信号機は相変わらず無駄に車の流れを止めていた。




そうか、「無駄」か。
そうだった、全て無駄なんだった。

人の通らない深夜に、信号が変わり続けるのは無駄。
私がそれを眺めながら泣いているのも無駄。

なんならこの生も無駄。
さらに言ってしまえばこの世の全ては無駄。


じゃあ、いいか。
それならいいかも。
うん、そっちの方がいい。

最初から全部「無駄」なら、苦しまなくて済むかも。
+が−に転じるのを見なくていいなら、感じなくていいなら、きっとその方がいい。

 

蝉の声だけが耳に響いている。
歩道の信号は、赤く点滅していた。










おわり

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