6月23日(水) 私のおばあちゃん
前の日記から少し日にちが空いた間に、色んなことがあった。
まずアイフォンをトイレに落とした。
そして、おばあちゃんが天国に旅立った。
アイフォンは復活しなかったけど、ギリギリSIMカードが生きていて、同じ機種の中古をその場で買って(しかも1万円で買えた!)
水没させる前とほぼ同じ状態に戻すことができて、水没させたことも日々どんどん忘れていく。
だけど当然のことながら、おばあちゃんはもう生き返ったりしないわけで。
おばあちゃんが生きていた時とこれからは、間違いなく見える世界が変わる。
とはいえ、不思議と哀しみに暮れているわけでも、ない。
だって。
(これは完全なる私の主観的観測だけれど)
おばあちゃんのご遺体と対面したとき
おばあちゃんの魂の、名残惜しさとか悔しさとか後悔とか
そういうダークなものを、一切感じなかったから。
「私はもう、いのちを燃やし切りました。
もうやり残したことはひとつもない。
あぁやっと、おじいちゃんの元に行ける。」
それくらいの清々しさを感じて。
そんな風に感じてしまったらもう、気持ちよく見送るしかなくなった。
おじいちゃんが亡くなって、
「どうして私を置いて行ったの」「さみしいさみしい」
とおいおいと泣いて暮らしていた頃から14年。
ようやくさみしさから解放されるね、とも思った。
私の中のおばあちゃんの記憶が鮮明にあるのは、
実はちょうどそのおいおいと泣き崩れていた頃からで
(その頃私は小学6年生だった)
そのあとは、さみしさから
わけのわからない高価な商品をうっかり買って家族を困らせる姿や
会いに行った帰りに「もう帰るのか、置いていくのか」と寂しさをにじませる姿、
徐々に認知症が進行し、色んなことがわからなくなる怖さや憤りから
よく怒っている姿、
娘である私の母との7年ほどに及ぶ2人暮らしの中で
娘とたくさん衝突しながら絆を深めていく姿、
晩年は施設に入所し、スタッフさんによくしてもらいながら
ぼんやりと寝る時間が増えていく姿、
かなしくも、そんな姿ばかりだ。
本当のところ、私はおばあちゃんの何を知っていたんだろうか?
どんな人だったんだろうか?
そんなことを、冷たくなったおばあちゃんの前で
思わなかったといえば嘘になる。
きっと何も知らなかった。
おばあちゃんの葛藤。苦労。悲しみ。喜び。愛情。
もっと知りたかった。知るべきだった。
小さい頃に実母を亡くし、幼い兄弟の子守りをしながら育ち、
戦争を経験し、兄弟を戦地で亡くし、
お見合い結婚し、2人の娘に恵まれるが
1人を若くして亡くし、
それでも職業婦人として、服の仕立ての仕事を長くにわたって続け、
好きな洋服やバッグ、アクセサリーを買って
夫や友人たちと、たくさん旅行に出かけた。
20年ほど前には、夫が病に倒れ数年にわたり看病を続け
先立たれたあとは1人暮らしをしていたが、認知症を発症し
娘と7年ほど2人暮らしをしながら支えてもらい、最期は施設に入所。
おばあちゃんの身に起こったことで知っていることを
列挙してみるとこんな感じだが、
その時々、おばあちゃんはどう思っていたのか。何を感じていたのか。
仮に話を聞いていたんだとしても、悔しいくらいに何も覚えていない。
きっとたくさん、後悔も苦労も葛藤も挫折も悲しみも嫌という程味わって、
だからあんなに強くたくましい人だったんだろうなと思う。
ただ、わからないことはたくさんあるけれどでも、
おばあちゃんの位牌の前で、家族揃って
おばあちゃんの思い出話で笑ったり、おばあちゃんの洋服を着てみては笑ったり
それだけで十分な気もした。
泣くばかりでもなく、遺族が後悔に暮れるでもなく
笑って話すことが、死んだすぐ後でもできるということは
本当に幸せなことだと思う。
おばあちゃんはおばあちゃんの人生を生き切った。
それに尽きるよね。
おばあちゃんの遺体をみていて、そんな風に思ったし、
もうとっくに魂は自由に羽ばたいていて、
抜け殻になったからだの前で、しくしく泣くのはなんだか無意味な気がした。
(もちろん意味もあると思う)
本当に、からだは借り物なんだなと痛感した。
私も、このからだを借りて今世を生きているんだな。
もっと綺麗だったらよかったとか、もっとスタイルがよかったらよかったとか
そんないちゃもんをからだにつけている暇があったら、
このからだを最大限に活かして、やれること・やりたいこと、
感じたいこと・味わいたいこと、
全部やりつくさなきゃいけないんだな。
どうしてか、おばあちゃんの抜け殻を見ていたらそんなことを思った。
本当にそれくらい、清々しかった。
誰かがなくなって、こんな風に思ったのは初めてで
自分でも不思議な感覚。
とても大切な「今」の感情な気がするので、ここに記録。
私の今回の死生観に、もしも気分を害するかたがいたら、すみません。
おばあちゃんに、最大の哀悼の意と愛を込めて。
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