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Weekly Quest <EVの将来>

(2023年11月27日号)


毎週月曜日に Weekly Quest と称し旬な話題を深く掘り下げて投資のヒントにしていければと思います。


電気自動車は今後普及するのか?


今回はEVなど新エネルギー車について再考してみたいと思います。先日、日経新聞に以下のような記事がありました。


この中で2022年の中国での新エネルギー車(以下、新エネ車)の販売台数が世界トップの688万台だったと言っています。

将来の温暖化防止対策として新エネ車の導入は、世界各国必須になりましたが、大規模な普及には障害が多く、投資家が期待したようにはなってはいません。

しかし、中国での販売台数が688万台で世界トップですが、対人口比で見ると約0.5%にしかなりません。さらに、2022年の自動車販売台数(新エネ車除く)は約2000万台です。これは対人口比で見ると1.4%になります。

これらを考えるとEVを含む新エネ車の普及はまだまだの水準ということになります(逆にまだ余地があるともいえるが)。これを他の国(中国、アメリカ、日本)でも見てみます。


(自動車販売台数は新エネ車をのぞいた台数)


これは2022年の販売台数です。コロナ禍での半導体不足などがあったにせよ、新エネ車の販売台数というのは人口比にするとまだまだ非常に低く、言われているほど普及していないということになります。

EV用バッテリーの原材料に困らない中国でさえ、ガソリン車を代替するほどの普及はしていないということになります。新エネ車関連銘柄の動きと比べると実態とはかけ離れているということがわかります。

さらに、中国に限らず、補助金が政府から支給されているにもかかわらず、普及率を見るとかなり低いということになります。EVについてはまず充電が面倒くさいということもあるのではないでしょうか。

スマホのようにケーブルを引っ張って差し込んで充電するのも、せっかくの次世代自動車なのになんだか格好が悪いです。無線給電で駐車場に車を置くだけで自動的に充電する技術が必要です。

また、そもそも電池やモータを希少金属でしか構成できないということで、いままで限られた企業が細々と製造販売してきたものを、一気に世界中の自動車全社が製造し始めたわけですから、原料不足にならないわけがありません。

さらに、その原料不足に目をつけた国が政治的な思惑や規制を実施しないわけがありません。いずれ代替原料による電池やモータが開発されると言われていますが、いったい、いつになればできるのでしょうか。

そういったことや現状の普及率を見ると急成長が見れるようになるのはまだまだ先の話ということになります。その間政府は補助金を出し続けなければなりませんし、おカネがない国では時間が経過すればそれもままならなくなります。

また、Teslaが今度はインドでの製造販売に乗り出そうとしていますが、人口が多いからと言って新エネ車市場が拡大するとは限らないということが中国の例を見れば明らかです。

インドは原油の生産を輸入に頼っているということや希少金属が今のところ僅かに採取できる程度ですから(輸出禁止にしている)、どうしても原料を輸入に頼った時点で普及が難しくなるというのは日本の例をみても明らかです。

これを考えるとTeslaのインドでのマーケティングはうまくいかないのではないかと思います。ただ、Teslaの2022年の販売台数が全世界で130万台として、日本、中国、アメリカの三カ国でのEV販売台数に占める割合は約20%になりますが、それでもPER77倍というのは買われすぎなのではないかと思います。


産業としての新エネルギー車


EVなどの新エネ車が今後、国の産業として発展するかどうかを考えてみたいと思います。

国の産業となるには、工場を建設して多くの従業員を ”適切な賃金” で雇用するということが条件になります。また、それが工場周辺の地元経済の活性化にもつながることはご存知の通りです。

EV車に必要な部品点数は約2万点と言われており、ガソリン車の3万点から比べると少なくなりますので、不要な部品については、その部品を他のものに転用しなければ、製造ラインが不要になってしまいます。

既存の自動車会社が新エネ車の製造に二の足を踏むのはこう言ったことがあり、なるべく部品点数を減らさないハイブリッド車をこぞって開発製造する理由がここにあります。

そう言った意味ではEV専業よりもハイブリッドを交えた既存の自動車会社という方が今後成長力としては可能性があるのではないでしょうか。ただ、アメリカの既存自動車メーカーにその才能があるとは思えませんので、アメリカでは消去法でTeslaが良いということになりますが、やはり最後はトヨタやホンダの方が有利だということになります。

おそらく、バッテリーの回生効率(アクセルを離したときに発電する割合)については日本車の方がTeslaよりも高いのではないかと思います。

さて、ここまで見てくると新エネ車については期待先行が過ぎるということになり、関連会社も含めて投資対象としてはだいぶ先の将来まで織り込んでしまったということができます。

それぞれの国の景気の行方も自動車販売には大きく影響を与えます。たとえアメリカで政策金利の引き上げが停止されたとしても高金利が維持される限りは自動車ローンについても高い金利を払わざるを得ず、金利がゼロだった時代と比較すると利益の縮小は避けて通れません。

また、既存の自動車メーカーについてもEV、ハイブリッドの売り上げ増加が、既存のエンジン車の売上減少をどこまで補えるのかという問題もありますので、いくらトヨタやホンダが有利だとはいえ、株価が上昇してしまった今、投資するのも得策とは思えません。

悪く言えば、所詮は代替産業ですのでシェアを拡大したとしても産業全体が拡大しなければ利益は増えないということになってしまいます。それを考えると新エネルギー車については、投資対象としてはもう一つ物足りないということになります。

ところで、昔の車や愛着のある車を売ってEVに乗り換えるより、エンジン部分をバッテリーやモータに積み替えるキットを販売している会社がありましたが、個人的にはこう言った積み替えの方が需要があるのではないかと思います。

以前、デロリアンをEVに改造している方を見かけましたが、なかなかセンスがあるなと思いました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考記事: