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Weekly Quest <日本の未来>

(2023年7月24日号)


毎週月曜日にWeekly Questと称し旬な話題を深く掘り下げて投資のヒントにしていければと思います。


輝かしい日本の未来か?


先週はアメリカの未来と題して人口構成から考えてみましたが、今までのような右肩上がり成長の継続が怪しくなるのではないかと書きました。一方で日本はどうなるのでしょうか?現状を踏まえた上で考えてみたいと思います。

自分達の将来になると途端に口をつぐみ、悪いことを見ると「未来の予想はできない」と勝手な解釈をして改善しようともしないのが日本人の特徴で(私もそうですが)、有効な改善策があるのかも疑問になってくるような状態であることには間違いないでしょう。

そういうこともあり、ここ最近日経平均が上昇し ”バブル後最高値更新” ということで盛り上がっていましたが、いまだ最高値を更新するような状況にはありません。史上最高値を更新していないのは日本だけです。この史上最高値になんの意味があるのかもわかりませんが、史上最高値をつけた1989年より日本の状況は悪くなっているのは事実です。

先週同様に、まず人口構成を見てみます。投資家の皆さんはすでにお気づきでしょうが、あらためて再確認してみましょう。


総務省統計局より引用


総務省統計局より引用


高齢化というのはもう十分に認知されていることではありますが、これらを見ると65歳以上の人口は今後増える一方だということがあらためてわかります。一方で人口が増えていれば問題はないわけですが、確認してみます。


総務省統計局より引用

以前から言われていますが、日本の人口は年々減少しています。これは労働生産人口にも影響しますので、今後の経済活動にはかなり悪影響を及ぼすことになります。1990年ごろに一旦人口の下げ止まりが見られましたが、その後減少に転じています。この頃から、日本の平均年齢が40歳を超え、日本から斬新な技術開発が出なくなりました。

これらをまとめると人口が減少している中、年を追うごとに平均年齢が上昇し高齢化が進むことは、やはり避けて通れないということになります。

これは企業においても同様のことが起きるということは当然の話ですが、政府や企業の意思決定レベルが今後飛躍的に向上するということは非常に考えにくいです。これは嫌味でも何でもありませんが、社会の高齢化は発想の硬直化を招くことになります。今後、政府や企業から革新的な発想が生まれるということはあまり期待できないということです。そのことを物語るデータがあります。


BUSINESS INSIDERより引用

これを見ると日本の「企業の意思決定の迅速性」が64カ国中最低の64位です。最近ではAIの話題が一般的になりましたが、こんなことなら、それこそAIに経営させた方がまだマシで、また、日本の企業で経営者がどれだけAIについて理解しているのかも疑問です。

「企業の意思決定の迅速性」というのは企業にとって非常に重要です。周りの環境が目まぐるしく変わっていく中で、経営判断が遅いのは致命傷になりかねません。

さらに、いまどき責任逃れのために何時間もくだらない会議を行い、稟議書を回し印鑑を押している場合じゃないのです。そういった悪習慣が染み付いていることの表れがこういったランキングに明確に出てきています。

柔軟な発想と言えば、ドコモとソフトバンクのTVCMが以前話題になりました。同じ携帯電話の家族割を宣伝するにしてもドコモは「サザエさん的昭和の家族」が描かれていたのに対し、ソフトバンクは「お父さんが犬、お兄さんが黒人、親戚はイルカ」といった変わった家族を描いていました。

「家族」ひとつとっても従来型の保守的なものなのか多様性を表現したものかで企業文化が大きく分かれたのは印象的でした。上記のランキングを含めて日本企業の経営硬直化がなくならないと今後の競争力が強くなるはずはありません。

現在世界でトップシェアをとっている企業もいつまでその状態が継続できるかはわかりません。そういう企業にも「後継者問題」が重くのしかかってくるのです。

日本企業全体の2008年から2020年までの売上高純利益率で4ー6月期の前年同月比だけを見ても以下の通りです


日経新聞電子版より引用

この間、売上高は24%増加していますが経常利益は-16%となっており、いろいろな環境はあるものの安定していない状況だということがわかります。

メディアでは営業利益率や経常利益率が右肩上がりで上昇していると言われていますが、最終利益については良い傾向ではありません。純利益が増えないと話になりません。

さらに、最近では日本でも人手不足が目立ち始めるようになってきましたが、高齢化により働く人が減少するわけですから、生産性の効率化が必要になるわけで、その際に硬直化した発想しかできなければ生産性の効率化はできません。

AIだロボット導入だと言われていますが、そういった思い切った発想も意思決定の硬直化により導入できないということになれば、利益が上がるはずがありません。

政治家やメディアもこういったことは認識しているわけですが、「人口減少のせいで日本経済が沈没するぞ!、今は緊急事態だ!」とは絶対に口に出して言いませんね。これは「(ネガティブなことが)起こると大変なことになるから、起こらないことにする」といった戦時中からつづく日本人の気質によるものですが、もはや時すでに遅しということです。

人口を増やすために移民政策を推進していく方法もありますが、必要なのは帰国してしまう人材ではなく永住してくれる移民です。それには移民側にもそれ相当のメリットがないと永住してくれません。わざわざ高い社会保障費を払ってまで日本に永住するのかということを考えるとそれも難しい話です。

また、外国人に旅行で来てもらうことは大歓迎ですが、隣近所に住まれるのは抵抗があるなどという意見もあり、日本では移民受け入れによる人口確保というのも難しい話です。

ということで、働く人が減少し、生産性の効率化を図ることができないということになると、企業の利益は増えるはずがありません。そういう状態で株価は上昇が継続するのでしょうか。

今後の株価を考える上で、長期的な懸念材料を無視し、都合の良い短期的な数字だけをとって「日本株は強い」といったところでなんの役にも立ちません。また、高齢化が進むにつれて日本でも格差がもっと拡大していくことになります。相続による格差が今後もっと大きくなっていく可能性があり、日本でもこの先どんどん格差社会が拡大していくことになるでしょう。

以上のことを考えると日経平均が史上最高値を更新することはおそらくないでしょうし、四十年周期(明治維新以降、日本の盛衰はほぼ40年周期)の底に向けていろいろ今までの常識を覆すような悪い事象がさらに起きてくると思います(災害なども含めて)。

こういったことを素直に受け入れ、日本株を長期の資産運用に利用する場合はよくよく考える必要があると思います。「日本人だから日本株」などという発想自体が硬直化している証拠です。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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