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Weekly Quest <ピザ食べる?>

(2022年12月5日号)


毎週月曜日にWeekly Questと称し旬な話題を深く掘り下げて投資のヒントにしていければと思います。


アメリカ人とピザ


早いもので12月になりました。年越し蕎麦を食べたのもついこの前のような気がしますが、月日が経つのは本当にあっという間ですね。

さて、先週はアメリカ人の外食の傾向を少しだけ見て景気後退の兆しがあるのかどうかを確認しましたが、今回はアメリカ人の大好きなピザから景気を考えたいと思います。

アメリカ人にとってピザは重要な食料で、シカゴピザのHPによると年間のピザ消費量は300億ドル、1日の消費量に換算して3000万枚にもなるとのことです。


全米でトップのピザチェーンと言えば Domino's Pizza(ドミノピザ・DPZ)で2021年の売上高は44億ドル、店舗数は全米で約6600店舗を構え、日本でもおなじみの会社です。まず四半期ごとの売上高と売上高前期比成長率を見ていきます。


(Revenue:売上高(百万ドル) Δ:前期比増減率)


2020年第一四半期からの推移です。毎年4Q(第四四半期)の売上高が急増していますが、10-12月期でクリスマス効果ということになります。ここ3年弱を見てわかることは、コロナ禍の影響はほとんどなかったということになり、12月にかけて毎年ピザの需要が大幅に拡大するということがはっきり示されています。

また、それ以外の時期も概ね一定の売上高を維持しているということがわかります。ただ、売上高の前期比増減率を見ると特殊要因を除けば、なんとなく右肩下がりのような気もします。

ドミノピザは今年の初めに配達員不足に対応するための賃上げを理由に値上げを実施しています。その影響が1Q(第二四半期)の数字にどのぐらい出るのか心配されましたが、売上高については4Q(2021年10ー12月期)の反動も考えると影響はそんなに深刻なものではありませんでした。

ただし、純利益ベースで見ると4Q(2021年10ー12月期)比で-41%の減益になっています。また、ドル高による影響は毎期ごとに拡大しており株価にとってはネガティブ材料になっています。

次にライバル会社の Yum! Brands(ヤム・ブランズ・YUM)を見てみます。同じように四半期ごとの売上高と売上高前期比成長率を見てみましょう。


(Revenue:売上高(百万ドル)Δ:前期比増減率)


ヤム・ブランズと聞くと日本人にはあまり馴染みがありませんが、ピザ・ハットやケンタッキー・フライドチキン、タコベルなどの親会社にあたります。

売上高にはそれらの売上が含まれますのでドミノピザと一概に比較はできませんが、外食関連として推移を見てみると、ドル高の影響はありましたが、こちらも売上に関してはコロナ禍やインフレの影響をほとんど感じさせない動きになっています。

こちらもクリスマスの特需の反動で2021年1Q(第一四半期)は若干落ち込んでいますが、それを踏まえても売上高は堅調に推移しています。ただ前期比の増減率は右肩下がりになってきているように見えます。


ピザ・プリンシプル


日本ではピザをデリバリーで食べるのが一般的ですが、アメリカでは個人経営のピザ屋が多くあり、しかもひと切れ単位で食べれるということもありニューヨークなどの大都市で多くの人に親しまれています。さらに、ピザ・プリンシプルという原則がありました。


記事にもあるように長い間ピザのひと切れの価格は地下鉄の運賃とほぼ同じ水準でしたが、2000年あたりからこの原則が崩れてしまいました。ちなみに現在の地下鉄運賃は2.75ドルです。それに対してピザの価格が3ドル以上に値上げされ、大きく乖離しています。


ブルームバーグ2022年4月2日記事より引用)


これはやはりインフレと賃上げが原因です。ピザ用のオーブン加熱に使う天然ガスの平均価格が平均で24%上昇したことや、小麦粉が11%、チーズなどの価格が上昇し、人手不足により賃金も引き上げざるを得なくなったことが要因でした。

現在では失業者一人当たりの求人が1.7人と言う驚異的な求人倍率になっていますので、賃上げして労働力を確保するしかありませんが、景気後退が鮮明になるまではこの状態は続くと思います。

しかし、大手のピザチェーン店を見ているとインフレの影響はすぐに値上げで対応できますが、中小は大変苦労しているといった様子です。

こうやって見てくると、インフレ環境で支出を節約する際に、一番最後に削るのが食費になりますので、ハンバーガーやピザの売上が鈍化し始めると経済は赤信号になりその後は本格的に景気後退となってしまいます。

現在まではコロナやインフレの影響を会社や消費者がなんとか乗り切ってきたような印象を受けますが、今後はどこまで耐えられるのかわかりません。そして、10ー12月期の決算が来年1月に発表されますので、その業績次第では景気後退が鮮明になってくるかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。