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幸福市平和村殺人事件物語

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詳細はこちらです。

さて、今回は物語を書こうと思ったのですが、長くなりそうだったので、あらすじ的に書きます。
機会があればまた今度。

『幸福市平和村の殺人』

ここは幸福市平和村。名前の通り、ここ数十年犯罪などは一切ない。
しかし、今日、死体が発見された。  

幸福市平和村の村長は望んでこの名前にしました。
もちろん、幸せいっぱいの安全で平和な村となるようにと、そんな願いを込めて。

最初は、村人もその精神を持って、平和は保たれていました。
しかし、小さな村ではありますが、犯罪0というのは現実的に難しい。
段々普通に犯罪が起こるようになりました。

そのおかげで他の村から嫌味を言われます。
「平和村なのにね」と。

そこで村長は決断をするのです。
もし犯罪を犯したら、村人に罰を大きくします。
そして公表しないようにします。
それからです、この村がおかしくなったのは。
恐怖を与え、押さえつけ、時には救いを与え。洗脳と一緒です。

それからというもの、この村からは一切犯罪が起きなくなりました。
表上は…。
実際には起きているのです。
それを村長を中心にみんなで揉み消すです。
罪を犯した者には体罰を与え、たくさんの村人で殴ります。
それをビデオに撮って、村人全員に共有します。
それによりそこに参加していない村人にも、共犯意識を植え付けるのです。
そしてこの犯罪自体を村の外には公表しない。

すると、周りからは本当に犯罪が一切ない平和村に見えてくるのです。
それにより村のPRにもなり、人気スポットになりました。
本日も平和村のお祭りに、たくさんの観光客、マスコミがやってくる予定です。

そうなると村長だけでなく村人もこれで良いと思うようになるわけで。
ますます悪い方向へ進むわけで。

村人全体が幸福市平和村という名前に憑りつかれている状態になりました。

なので村のイメージを守ることは普通だと思っているのです。
だから村全体で犯罪を隠すのです。
クリーンをみんなで装っているのです。
映像を撮って村人全員で共有するというのも、結束力に変わってきました。

しかし、今日起こった殺人事件は少しだけ違いました。

その死体は、村長だったのです。
村人に動揺が走りました。
村長が殺された…。
これはどんな意味を持つのか…。
村長の死体を囲んで、みんな黙り込んでしまいました。

その時、副村長が言ったのです。
「いつも通り処理しよう」

村人は静かに動き出しました。
いつもよりはぎこちないが、死体を黒い袋に入れて、それをカメラに撮って…。
いつも通り処理をしました。

さて、ここからどうしようか?
今日は平和村のお祭り当日。
マスコミから村長のインタビュー依頼を受けている。
「村長の体調がよろしくない」と断ることもできる。
しかし、この幸福市平和村という名前には、健康という意味も入っているのです。
それなのに、全国に村長の健康が損なわれたということを流すのはまずい。
村長は絶対インタビューを受けなくてはいけないのです。

副村長は考えました。
そういえば、村人の中にファッションメイクアーティストがいる。
そのファッションメイクアーティストに、特殊メイクで副村長を村長にしてもらうことにしました。

村の一大事です。
ファッションメイクアーティストも快くそれを引き受け、村長のマスクを作りました。
それを副村長が被り、お祭りがスタートします。

村人には悪い感情など一切ありません。
このピンチを乗りきり、平和村を守る。
むしろ正義感でした。
村長の死より、村の平和。
皮肉なことですが、村長の理想を見事に果たしています。

盛り上がりを見せるお祭り。

そしてマスコミもやってきました。

村長になった副村長に村人たちから激励が飛びます。
最大の仕事を任せる村人たちの目は、キラキラ輝いていました。

そして副村長はマスコミの前に立ちました。
マスコミは村長にインタビューを撮ろうとマイクを向けました。

その時でした。
考えらないことが起こりました。

副村長はマスクを脱いだのです。
カメラの前で…。

村人もマスコミも内容は違いますが、衝撃は同じでした。
何が起こっているのかわかりませんでした。
副村長以外は…。

「私は村長を殺しました」

誰もがその言葉についていけませんでした。

「この村は平和村ではありません。犯罪は全て隠ぺいしていました。これが証拠です」
そう言って、副村長は今朝の村長の死体処理の映像を、スマホでカメラに見せた。

ずっと副村長はこの村のこの状況に疑問を持っていたのです。
副村長は自分がやっていることが正しいのかどうかわからなくなりました。だから副村長はこの村の真実を世に知らしめたいと思ったのです。

そこで副村長は計画を立てました。

村長を殺して、村長になりきってカメラの前でマスクを外す。そして映像を見せる。
全て計画です。

この衝撃的な告白によって、幸福市平和村の真実が暴かれます。
村人たちは驚きや恐怖や怒りや悲しみや後悔などの感情に揺れ動きます。
世間の人々もこの事件に興味や関心や非難や同情などの反応を示します。

村人にはこの事件により、洗脳が解ける解けないものがいます。
副村長も正直あやふやでした。
自分のやったことは何だったのか?
良いことをしたのか?悪いことをしたのか?
村長を殺す必要があったのか?

幸福市平和村。
ここにずっと住んでいると、平和がわからなくなります。

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