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感動が少し冷める物語、けどそれがいい物語

「最後の言葉」

ある日、山田太郎という男性が、自宅の郵便受けに一通の手紙を見つけました。

差出人は、彼の妻である山田花子でした。

しかし、花子は一年前に交通事故で亡くなっていました。
太郎は、驚きと不安と好奇心に駆られて、手紙を開けました。手紙には、次のように書かれていました。

太郎さま

こんにちは。私は花子です。
あなたがこの手紙を読んでいるとき、私はもうこの世にいないでしょう。
私はあなたに伝えたいことがあります。
それは、私があなたをどれだけ愛しているかということです。

私たちは結婚して十年になりますが、その間に喜びも悲しみも共にしましたね。
私はあなたと一緒にカラオケしている時が一番幸せでした。
お互いの好きな曲を歌い合って…。
またカラオケ行けたら最高だなと思います。

愛してる。
私はあなたを愛しています。
私はあなたのことを忘れません。
私はあなたのことを想っています。
私はあなたのことを待っています。
私はあなたのことを祈っています。
私は本当に愛してる。

太郎さま、これが最後です。
これからも元気で幸せでありますように。
そして、いつかまた会えますように。

さようなら

花子より

太郎は、手紙を読み終えると涙を流しました。
涙で手紙が濡れました。
…?
透けて何か見えました。
何だと思って太郎は手紙の裏を見ました。

そこにはQRコードがありました。

太郎はそれを読み込みましました。
するとそこから、聞き慣れた声が流れてきました。

それは花子が太郎の好きな曲を歌っている動画でした。

花子らしい用意周到さに、太郎は再び涙しました。
太郎は、花子の願いを叶えることを決めました。
太郎は、元気で幸せに生きることを決めました。
そして、いつかまた花子に会うことを信じました。

そんな太郎は、ふとスマホを見ました。
ラインの通知が来ています。
花子からでした。
同じ文章が書いてありました。
そして同じくQRコードも。

それからメールも来ています。
花子からでした。
同じ文章が書いてありました。
そして同じくQRコードも。

もしかして…。
太郎はパソコンを開きました。
メッセンジャーが来ています。
やはり花子からでした。
もちろん、同じ文章が書いてありました。
言うまでもなく、QRコードも。

すげー届けようとしている。
もしかしたら、郵便受けを見ないかもしれない。
もしかしたら、ラインのアプリをアンインストールしているかもしれない。
あらゆることを考えての花子の行動。
太郎は、やっぱり花子は抜かりないと思った。

そして、コツンコツンと音が聞こえた。
伝書鳩がくちばしで窓を叩いていた。
「まったく花子は…」と太郎は少し笑った。



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