まえに書いたもの その1

だいぶ前のものになるのですが、

以前、三か月に一度のペースで連載していた読売新聞大阪版コラム

『女のミカタ』の初回 2014.12.22 掲載のものをば。

※ゲラで直した部分など、実際の紙面とは少し異なる場合があります。


思い返せば、計算間違いの多い子どもだった。

算数の文章問題でも、考えの筋道は合ってるのに最後の最後、計算間違いでバッテンになってしまい、先生に赤ペンで「よく見直しましょう」と書き込まれることもしばしばであった。


 大人になった今でも、というか今だに、計算間違いばかりしている。

たとえば。14時の待ちあわせだから、家を13時30分に出たら間に合うな。逆算して一時間前から支度を始めよう、と考える。

ここまでは合っている。

なのに、干すのを忘れていた洗濯物が突如目の前に現れたり、テレビの録画予約に手間取ったりと想定外の出来事にあたふたしてしまい、結局いつも遅刻ギリギリ。息を切らせつつ「お待たせ」と待ちあわせ場所に現れるハメになってしまう。

先日はもっとひどかった。

近所のスーパーでは、エコバックを持参するとポイントをつけてくれる。その日も「レジ袋はいりません」とキッパリ断わり、持参したバックに買った物を詰めたものの、どうしても入りきらない。

テトリスさながら隙間を見つけてギューギュー詰め込んでみても、まだ無理。完全に計算間違いだ。
だけどここで「やっぱりレジ袋ください…」とは言えない。すでにポイントをつけてしまったからだ。そんなことしたらポイント詐欺になってしまう。

仕方なしに、コートの右のポッケにゃ洋ニンジン、左のポッケにゃ三連パックのコーヒーゼリー、とマヌケな万引き犯のような恰好で、一目散にスーパーを後にしたのだった。
とりあえず、来年の手帳の1ページ目には「よく見直しましょう」と赤ペンで書き込むつもりだ。




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