おすそわけ日記 234「慎みの方向性」
突然の雨。気温差にグッタリしている我が家の母娘。
稲光が恐ろしいほどに美しい。
こんな日は家にいるのが幸せ。
だが、私たちには使命があるのだ。
明日は、燃えるゴミの日。
誰かが、マンションの下までゴミ出しに行かねばならぬ。
と云う程、大した話ではまるでない。
ただ、私のカッコがね。
着古して、肩に穴の開いたTシャツに半パン、ノーブラ。
一方、母はロングワンピース。
裾濡れたら、可哀想だなぁと思い、私が大役をかって出る。
家を一歩出るからには、女性としての慎みを忘れてはいかん。
パーカーをさらっと羽織れば、ほ〜ら、色々隠れますよ〜。
万が一、人と会ったら、胸の前でモジッとポーズで。
まぁ、でもね、そうそうドンピシャのタイミングで人と会いませんよ。
そう思いながら、家を出た途端に思い出した。
「私、今、踵におっきな穴の開いた靴下履いてる!
それも、雨の日用のサボで、踵丸見え!」
もう、絶対に、人と会うわけには行かない。
想いを余所に、いきなり、エレベーターホールで同じ階の男性と遭遇。
「こんばんは〜」挨拶に力も笑顔も出ない。
見ないで、私を見ないで!
開いたエレベーターにも男性が乗っていた。
「こんばんは〜」一番前に立つのが辛すぎる。
一階に着き、同乗の皆さんに先を譲ったら、譲り返されてしまった。
後から着いてこられたら、踵丸見え。
だが、モジモジしていても、事態は好転しない。
めっちゃ恥ずかしいよぉと云う想いを秒で断ち切る。
「この靴下、踵がツートンカラーなんです」
頭の中で、その台詞を何度も唱え、ゴミ捨て場まで辿り着く。
そそくさと家に戻ろうとして、郵便受けでもエレベーターでも人に会う。
それも、全員男性。私より、まともな格好の。
私、この雨に、溶けてなくなりたい。
家に着いた第一声が「お母さん、この踵見て!」
母が笑いながら「男の人は、踵なんて見ないよ」
そうだよね、踵なんて。
踵なんて…あ、ノーブラ。
そこじゃん!私が隠すべきはそこだったんじゃん!
人に会ったら、パーカーの前を合わせて、腕で胸を隠すはずだったのに。
慎みの方向性が、完全にスライドしている。
と云うか、何故、一方向にしか機能しないんだよ、私の慎み。
女性として、人として、全方向での慎み深さを求む。
明日、忘れていなければ。
【今日の一枚】タイトルは手書きで統一しようかなぁと思う程に、書くのは楽で自分らしいと思います。私、学生時代から、線に合わせて文字を書けないんです。なので、グリッドの紙に好き勝手な方向で書いてます。
【#つづく日々に】のタグをつけて、日常で心ときめいたことを投稿中。日常のよろこびをみんなでシェアしあって、笑顔が増えたら嬉しいです。
毎日、書く歓びを感じていたい、書き続ける自分を信じていたいと願っています。