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ペットロス〜前回の続き〜

冷たく硬くなったももと最後の一夜を過ごし、私たち夫婦は夕方葬儀の人が来るまでの準備をした。

私たちは黒い服を着てももの為に花を買い、好物だったバナナとソーセージパンを買い、手紙を書くためのレターセットを買った。
帰宅し、手紙を書いた。
もも宛の手紙と、母宛の手紙。
2人が天国で再会できることを願って。

葬儀の担当者がうちに来て、私たちはももと最後のお別れをした。
火葬車にももを乗せて、口の近くには好きだった食べ物を置き、両手の間に手紙を挟み、身体の上にブーケを置いた。

担当者の方は
「お名前は何ですか?」
「何歳だったんですか?」
「どんな子だったんですか?」
等、優しい口調でももがどんな子だったのか聞いてくれた。

そんなマニュアルがあるのかもしれないが、ももの最期をきちんと見届けようとしてくれている誠意を感じた。

最後にももの耳元で
「もも、今までありがとうね。ちゃんとお母さんを見つけるんだよ」

そう言って私たち夫婦は泣きながらももを見送った。

もうあの姿を見ることが出来ないんだと思うと悲しくて悲しくてしょうがなかった。
冷たくても硬くてもいいから1分でもいいからそばにいて欲しかった。

家に帰り、私たち夫婦は抜け殻のような気持ちで過ごした。
2人とも無気力だった。
今日はお葬式。
何も食べる気しないけど、人間のお葬式の時ってやたらと食べるよなぁとか考えていた。
料理なんてする気力もないので
「今夜は外食しようか」
と言い、お店を予約した。

見送って約1時間半後、ももは骨になって家に帰って来た。

放心状態の私たちは取り敢えず出掛ける準備をしてご飯を食べに出掛けた。

帰宅して2人でワインを飲んだ。
「今日はお葬式だね」
そう言ってテーブルの上にももの骨壷を置いて、それを眺めながら過ごした。

ベッドに入るのが怖くて、なかなか寝る気にならなかった。
いつも赤ちゃんのように私にくっついて寝るももがいないのを分かっているから。

それでもベッドに入った。
やっぱり寂しい。

翌朝起きるとももがいないのも悲しくて泣いた。
いつもなら朝目覚めて一番に「おはよう」を言って抱きしめたり撫でたりする相手はももだったから。

ベランダに出てコーヒーを飲みながら号泣した。

こんなに辛いのはお母さんの葬式以来だ。
辛さは長引くだろうなと思った。

雪はももがいなくなってからずっとしょんぼりとした顔をしている。
おもちゃを全部与えたけどほとんど遊ばない。
ルーナはいつもより甘えてくるし、ももの骨壷が入ってるキャビネットの近くによく居る。
2人とも何かを感じ取ってる。

雪は可愛い妹であり犬仲間を失ったし、ルーナはお姉さんのようなお母さんのような存在のももを失ったのだから当然か。

昨日、私がお世話になってる精神科医のところに行くと「あなたとももちゃんの関係性を考えると、今の状態は少なくとも1〜2ヶ月はかかります」と言われた。

そして「悲しみはできるだけ吐き出して下さい」とも。

思う存分悲しんで泣いたら、次のステップに行けるのかな。

あんなに可愛い可愛いトイプードルみたいな犬はもう飼えないなと思った。

そうだな。いつかまた犬を飼うとしたら一戸建ての家を買ってグレートデンやセントバーナードみたいな、全然系統の違う犬を飼うだろうな。

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