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ママのための化学教室-6〜賛否両論、それでも身近なタンパク源

学校給食や、アレルギーで問題にはなるものの、やっぱり身近な動物性のタンパク源の一つである牛乳。雪印メグミルクのHPより、牛乳から作られる製品について、わかりやすくミルクの木で紹介してあったのが下の図です(1)。今回は牛乳を題材に。

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知っているようで知らない牛乳のタンパク質

牛乳は、牛のお乳です。なので本来は子牛に飲ませるためのものを人間がいただいています。
もともと子牛の体を作るための飲み物なので、タンパク質の他にも、色々な栄養素がふんだんに含まれています。それが合う合わないは、人間側の問題なので、とりあえず、そういうものだと考えていてください。人乳と牛乳のタンパク質の違いを示します(2)。

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ホエイタンパク中のラクトフェリンは、熱に弱いので注意が必要ですが、体内で合成できない必須アミノ酸や分岐鎖アミノ酸をバランスよく含んでいるタンパク質で、筋肉や血液を作るもととなります。低温殺菌牛乳が体に良いと言われる根拠はここにあります(2)。

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タンパク質のうち、カゼインを除いた残りがホエイタンパク質で、その中に含まれる成分は、最近の研究の進歩とともに、微量でも、健康に役立つ機能性成分があることがわかってきました(3)。

カゼインホスホペプチド(CPP)…カゼインが消化される過程でできる物質で、小腸下部でのカルシウムの吸収を助けます。

オピオイドペプチド…カゼインからできる物質で、神経の興奮をしずめる作用があります。

乳塩基性たんぱく質(MBP)…ホエー中に含まれ、骨密度を高める働きがあります。

オピオイドペプチド…カゼインからできる物質で、神経の興奮をしずめる作用があります。

ラクトフェリン…生乳や母乳に含まれる成分で、病気の感染を予防し、免疫力を高める働きがあり、また、鉄の吸収を促進し、貧血の予防改善作用が認められています。

ラムスデン現象

牛乳を40℃以上に温めると、表面に薄い膜ができます。この現象は、ラムスデン現象と呼ばれ、加熱により牛乳表面で水分が蒸発して、タンパク質を主体とした濃縮凝固が起こり、膜が作られます。この膜は、牛乳中の脂肪や乳糖も含んでおり、口当たりは少々悪いものの、ちゃんと食べられます(表に組成を示します)。この膜を集めて作るチーズもあるとのこと。豆乳から作られる「湯葉(ゆば)」も同様の原理です。

 表. 皮膜の組成(4)

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※Ca; カルシウム、P; リン、K; カリウム、Mg; マグネシウム、Na; ナトリウム、Zn; 亜鉛、Ca3PO4; リン酸三カルシウム

牛乳を温める時の、温度の目安にもできます。よくかき混ぜながら温めると、膜になりにくいようです。

ここまでの話と実際の変化を比べてみませんか? 

親子で作ってみよう「カテッジチーズ」

早く牛乳を消費したい時、急にチーズが食べたくなったけど、冷蔵庫には牛乳しかないという時、お役立ちの簡単レシピです。牛乳に酸を入れると固まる「酸凝固」という性質を利用して簡単に作れます。

今回は、液体の方も飲めるようにレシピをつけています。酸として、「酢」を利用していますが、レモンの絞り汁などでも可能です。種類を変えて味の変化を楽しんでみては? 量は目安なので、色々アレンジしてみてください。

【材料】
牛乳 500mL
酢 1/4 cup
塩  少々
好みでハーブソルト(市販のドライハーブと塩が混ざったもの)、おすきなドライハーブやナッツ類、生のハーブを刻んで混ぜ込んでも
きび砂糖 適量(ホエィ用)


【器具】
片手鍋(蓋つき)
ザル
濾し布(晒し、手拭い、不織布ガーゼ、キッチンペーパー etc.)
麦茶用のガラスポットなど、ホエイ保存用

【作り方】
1. 鍋に牛乳を入れ、中火ー弱火で温めます。このとき、牛乳表面に膜ができる一歩前で火を止めてください。

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2. (1)の鍋に、分量の酢を入れたら、ゆっくりと底の方から2,3回かき混ぜ、蓋をして10分ほど放置します。

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3. 放置後、鍋の中で固形成分(カゼインタンパク質ほか)と、ホエイタンパク質を含む液体に分離しています。

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4. ザルに濾し布を敷いて、鍋の中身を開けます。

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5. 液体はガラスのポットなどに移して、お好みで酢を追加したり、きび砂糖入れて味を調節して冷蔵庫で冷やしておくと、これからの季節、美味しくいただけます。

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6. 固形成分は、ザルにうけた状態で、30分ほど室温で自然放置して、水分を抜きます。
水分が抜けた固形成分が「カテッジチーズ」になります。そのままだと、味のない豆腐みたいな感じです。このままでも、クリームチーズがわりに使えます。

少し塩やハーブを混ぜておくと日持ちはしますが、冷蔵庫に入れて、なるべく一週間くらいで使い切ってください。パンに乗せて焼いたり、炒め物に入れると、いつも食べているチーズのような食感になります。


もう少し詳しく知りたい方のために


1.https://www.meg-snow.com/fun/academy/milk/wonders/milktree.html、雪印メグミルク、ミルクの木

2. タンパク質の熱変性、TOMO MILK, 東毛楽農業協同組合
https://www.milk.or.jp/belief/heatdenaturation.html

3. 一般社団法人 日本乳業協会、
https://www.nyukyou.jp/dairy/index.php?rm=4&qa_id=469
牛乳の栄養と機能


4. https://core.ac.uk/download/pdf/148775568.pdf
乳製品製造におけるタンパク質の凝固と分解、細野明義、 大谷元、New Food IlIduslry Vo!. 2崎, No.7 (1984)

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