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能力のトライ&エラー

宝塚歌劇団には入れなかったけど、劇団四季のライオンキングに出演している。
こんな素晴らしい舞台に立てているだけで、十分幸せじゃないか。

そう自分自身に言い聞かせ、本当に充実した毎日を忙しくも楽しく過ごしていた。

しかし…約1年くらい経ったある日ふと思う。

私はこのままで良いのだろうか?
他にやりたい事はないのだろうか?

自己満足に近い感覚で無我夢中で舞台に立ち多くの事を学び、満員のお客様に観劇してもらい滅多にない経験をさせて貰っている。

そして応援してくれている両親にも感謝しなければならない。

しかし…私は、この先はどうするのか。
自分のやりたい事や人生に対して疑問に思うようになった。

東京の生活が不安になった訳でもない。
友人も沢山出来た。地方出身者が多く皆んな優しくて良い人ばかりだった。

でも何かが違うような感覚で過ごしていた。

一旦、実家に帰って考えてみようかな。

25歳になった私は、そんな想いで劇団四季を去った。

後に聞いた話によると私は、次に新設される京都劇場の柿落とし公演のオペラ座の怪人の稽古に入るはずだったらしい。

でも不思議な事にもう未練は無かった。

やはり劇団四季は厳しい世界であった。
楽しいばかりでは無く、周りはライバルだらけだし日々精進し緊張感のある生活をしなければならない。
特に、ロングラン公演は新鮮な気持ちで1回1回を大切にしなければならない。

どんな仕事もそうだけど、責任を持って毎日生きることは、そう簡単ではない。

仲良しだった同期の子が休演日の劇団レッスン後の掃除中に骨折してしまった事がある。
隣で一緒に掃除していた私は本当に血の気が引いたのを覚えている。

次の日、その子の役は急遽キャストを変更して上演された。

代わりはいくらでも居るのである。
それがアンサンブルの良い所でもあり、恐ろしい所でもある。

虎視眈々と役を狙ったり、日々勝負のような世界に私は向いていないのかも知れない。

自分の心が折れてしまわないうちに、そんなシビアな現実から離れたかったのだろう。

新たな出会いを求めて、私は次の舞台を探す為に実家に帰る事となる。

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