【トレーシングレポート#15】テオフィリンの中止を提案
「この喘息の患者さん、テオフィリンを 20 年以上のんでいるけど、ここ数年は喘鳴どころか咳や息苦しさもまったくない。これだけ安定しているなら、吸入薬だけのほうがいいかもしれないな…」
喘息患者さんに服薬指導をしている時、このように思うことはないでしょうか。
テオフィリンは効果にくらべて副作用が多く、吸入薬が使用できない場合や吸入薬とロイコトリエン受容体拮抗薬などでは症状をコントロールできない場合をのぞき、新規で処方されるケースは限定的な薬です。
ただ一方で、1990年代までは治療の中心だったため、当時から服用している患者さんには喘息の症状がまったくない状態にもかかわらず処方され続けているケースに出会います。
テオフィリンは有効安全域がせまいためTDMが推奨されており、慎重に管理する必要のある薬剤のひとつです。また、さまざまな要因や他の薬剤により、血中濃度が変化しやすいという特徴があります。
そのような薬が漫然と投与されている状態は、服用による利益よりも不利益のほうが上回っている可能性が高いです。リスク管理の観点からも、できればそのような状況は避けたいと思いますよね。
では、患者さんがどのような状態であれば、テオフィリンの中止を検討すればよいのでしょうか。
コントロールが安定した後のステップダウンの方法について明確な指針はありませんが、「喘息予防・管理ガイドライン2021」では「喘息コントロール良好な状態が 3 ~ 6 カ月間持続したら治療のステップダウンを試みる」と記載されています。
ここから、
・気管支喘息の症状(喘鳴、咳、呼吸困難、息切れ、胸部絞扼感)がない
・症状の増悪がない
・発作薬の使用がない
・運動など日中の活動制限がない
の 4 点が半年以上継続して確認できるケースであれば、テオフィリンの中止提案を医師にしてもよいのではないかと考えています。もちろん患者さんの意向をふまえた上で、ですが。
なお、呼吸機能検査や末梢血好酸球数などの結果が確認できれば理想的ですが、それが分からなければ提案してはいけないというわけではありません。
実際、複数の医師に確認したところ「(薬剤師が提案する際に)検査の結果をふまえていれば好ましいとは思うけど、こっちで改めて検査するし、なくても全然気になくていいよ。」と言われました。
以上から、冒頭のケースのようなケースで服用されているテオフィリンは、中止を検討するに値すると考えています。
このようなとき、薬剤師としてのアセスメントをどういった方法で医師に伝えているでしょうか。
疑義照会で伝えるのもよいと思います。しかし、漫然投与についての提案は緊急性が低く、なかなか疑義照会できないことが多いですよね。
なんとか疑義照会をしても「いま何も問題ないから、そのまま出しておいて」と、医師から返事がかえってくるという経験を何度もしたことがあるかもしれません。
こういった状況で大活躍するのがトレーシングレポートです。トレーシングレポートは、緊急性は高くないものの薬剤師としてのアセスメントを医師に伝えたい場合に、とても有効です。
もしかしたら、トレーシングレポートを使って医師に処方提案をしようと思ったことが、今までにもあったかもしれません。そのとき、一歩を踏み出すことができたでしょうか。
トレーシングレポートによる処方提案は、最初のハードルが1番高いです。
ただ、そのハードルさえ思い切って越えてしまえば、薬剤師としての仕事の幅が驚くくらい広がります。そしてそれは、患者さんに提供できる医療の質が向上することを意味します。
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この対応がいつでも正解というわけでは全くありません。
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以下が有料部分についての概要です。
【処方および提案内容など】
40代 男性
1.テオフィリン徐放錠100mg(12 ~ 24時間持続) 2 錠
1 日 2 回 朝食後および就寝前 30日分
2.ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入剤60吸入 1 本
1 日 2 回 ( 1 回 1 吸入 )
・現病歴:気管支喘息
・併用薬:なし
・肝機能障害:なし
・腎機能障害:なし
・喫煙:禁煙開始後 10 年以上経過
・処方提案の内容 :テオフィリン徐放錠100mg の中止
・提案結果 : 上記薬の中止
・その後の経過 :気管支喘息の増悪なし。吸入薬のみで良好なコントロールを維持
【参考文献】
喘息予防・管理ガイドライン 2021
一般社団法人日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会(監)
協和企画
【特徴】
・薬剤師と患者さんのやりとりを会話形式で記載
・上記を基に作成したトレーシングレポート
【対象】
・トレーシングレポートを使って処方提案をしてみたいとは思うものの行動を起こせずにいる方
・トレーシングレポートの文章が書けずに困っている方
・患者さんから情報を聞き出すことや、医師への情報提供にあたっての同意をとることに難しさを感じている方
【対象外】
・疑義照会で十分な処方提案ができると確信している方
・患者さんから欲しい情報を難なく情報収集できる方
・医師に向けて文章を書くことに難しさを感じていない方
最後に…
漫然投与になっているケースの多くは、問題が目に見えてあらわれているわけではなく、すぐに対処する必要性も低いです。
しかし、薬剤師が積極的に関与することで、患者さんの服薬負担や将来的な薬物有害事象の発生リスクを低減させることができます。
トレーシングレポートによる処方提案は、対人業務をすすめるうえで、きっとあなたの強力な武器になります。
飛びこんだ先には、患者さんや医師との新しい関係が待っています。
ぜひ、購入をご検討ください。
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