トヨタ自動車のデジタル変革!日本最強の自動車メーカーも苦難の連続だった!
やや旧聞に属するが、昨年、トヨタ自動車がSAPジャパンのカンファレンスで発表した内容について考察したい。
「自動車」の会社から「モビリティ(移動)」の会社に変身するとは、どういう意味かおわかりだろうか?トヨタ自動車は、従来は、品質の良い自動車を製造・販売して成長してきた。だが、自動車は、実際に乗車している時間(稼働率)は、極めて低いとの調査結果が出ている。大都市圏(東京・大阪・名古屋)か田舎かでも違うが、一般的には稼働率は4.2%だと言われている。富裕層で、レクサスやベンツ、BMWなどを「とにかく所有しておきたい」という人にとってはどうでもいい話かもしれないが、庶民にとっては稼働率4.2%のために何百万円もする自動車を購入して、車検などの費用も払うのはけっこう辛い。
レンタカーという手もあるが、トヨタ自動車は、「Kinto(キントー)」というサービスの提供を開始した。これは、契約期間内に他の車に「乗り換え」することもでき、非常にうれしいサービスだ。「買い替え」と比較して、非常にコストメリットが大きいだろう。
つまり、「自動車を製造して販売する」ではなく、「ユーザーの移動を助ける」会社へと、徐々に移行していく、ということなのだ。ヘビーユーザーにとっては所有欲があるだろうが、最近の若者にはこのようなサービスのほうが利用しやすいだろう。
他にも、トヨタ自動車は、Wovenという、街をつくろうとしている。自動車は、これから「コネクテッド」と言われ、信号機や自動車間でネットワークをつなぎ、相互通信をしながら事故を予防したり、街全体で渋滞を低減するなどの施策がとれるように進化していく。その実証実験のために、トヨタ自動車は街をつくるのだ。はっきり言って、これができるのは連結売上高が30兆円もあるトヨタだけだ。他社はここまでスケールの大きいことはできない。
そして、これだけビジネスモデルが変わっていくならば、トヨタにとってデジタル変革は必須であるのだ。自動車のサブスクリプションやコネクテッド技術の開発は、今までとは異なり、アジャイル開発が求められる。システム開発の規模が大きくなるだけではなく、「システム部門の組織風土・文化」も変革しなくてはならないのだ。いわば、御用聞きシステム部門では駄目で、積極的にビジネスモデル変革のために挑戦する組織でなくてはならないのだ。それが、以下に引用する、これからのデジタル人材として求められる要件をまとめたことに直結する。
だが、トヨタの道のりは長い。トヨタのような巨大で、歴史の長い企業は、業務プロセスを支えるシステムが複雑でスパゲッティのようにこんがらがっていることが多いのだ。
いやあ、驚いた。レガシーシステムが約800も存在している・・・しかも、これらのシステムは複雑に絡み合っているので、一部を修正すると障害が発生するリスクがある。そのため、既存のシステムがどのように構成されているのか、調査する必要があるだろう。これらのシステムを刷新するのに、いったい、何十億円、いや、何百億円の予算が必要なのかわからない。このように複雑怪奇なシステムだと、「あのデータがみたい」と思っても、すぐに対応できるものでもないようだ。
現代は、データ(情報)は権力者によって独占されるものではなく、社員全員が自由に閲覧して、そのデータを使って様々な業務を遂行することが求められている。例えば、Tableau(タブロー)というBIツールを使って、社員が自由にデータを引っ張ってきて、分析する・・・このような会社もある。トヨタはまだまだ道半ばだが、日本最大・最強のトヨタがデジタルにも強くなれば、鬼に金棒であろう。
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